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A「駅前にオープンしたお店のチョコレート、すごく美味しいんだって。食べに行かない?」
B「ホットドッグ片手に言われてもな~」
揶揄いを含んだ彼の声色についムッとしてしまう。
A「・・・じゃあ行かない?」
B「・・・仕方ないから一緒に行ってやるよ」
弓なりに目を細めて悪戯気に笑う彼の表情に、何故だか胸が高鳴る。
A「っ、チョコ、好きなんでしょう?」
彼が甘いものが苦手ということは知っていたので、さっき揶揄われたお返しにと態と回答を知っている質問をぶつけてやる。
B「・・・うん、めっちゃ好き」
しかし返ってきたのは予想外に“好き”の言葉。
A「ふーん、そっか。甘いものは苦手って前に言ってたけど、チョコは平気なのね」
私の言葉に突然立ち止まり口をぽかんと開けたかと思うと、彼は直ぐにその場にしゃがみ込んでしまった。
地面に向けられた表情を窺うことは出来ないが、髪の隙間から覗く耳は赤く色づいている。
B「・・・チョコの言葉、聞こえなかった」
A「え、」
――それは、つまり。
彼の言葉と態度から意味を理解してしまった。
言葉に詰まっていれば、彼は顔を上げてしゃがみ込んだままの体制でこちらを見上げた。
その頬は驚くほどに紅潮している。
B「・・・めっちゃ好き」
――チョコよりも、お前が。
口元を手で覆い隠しながら私を真っ直ぐに見つめた彼は、先ほどと同じ言葉を紡いだのだった。
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