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頓珍漢ならことを言う青年に素っ頓狂な声を出す男。
どちらもどちらで不審者だ。
しかし、男は気づいた。周りから注目されているのは自分だけなことに。
「あぁ。言ってませんでしたがボクは他人に見えてませんので。下手に喋らないことを推奨します」
それを聞いて男は言葉を失った。クスリをやっていたわけでもないのに突然、幻覚が見えるようになったのだから無理もない。
「普通は見えるはずのないものが見えて驚いてる感じですか?先に言っときますけどあなたは正常ですよ。そっちが見えてるのではなく、こちらが見せているのです」
「見せるって・・・なんの為にだ」
男は別に青年の言ってることを完全に信用したわけではない。まだ疑ってはいるが現状がこれなのだから、とりあえず声のトーンを落として話し始めた。さっきまでは他人の目など気にせず大声で怒鳴り散らしてたのに。
「はい!よくぞ聞いてくださいました!」
一方の青年は男とは対照的に声のトーンを上げて説明し始める。
「生活保護を貰っているのにもかかわらず、競馬やパチンコ、競艇でお金を溶かす日々を送っている、そんなどうしようもなく底辺でクズなあなたに朗報です!」
「てめっ!なんでそれを・・・」
そう、この男は生活保護を貰いながらも、そのお金をギャンブルに注ぎ込む悪人だったのだ。
「ボクはあなたに関する情報なら、な~んでも知ってますから。例えばあなたが今、莫大な借金を抱えてることも」
青年はおどろきのあまり何も言えなくなっている男を見て満足そうに笑みを浮かべた後、「ゴホン」と1回咳払いをして仕切り直した。
「ともかく、ボクらはそういう過程があってお金を溶かしているような人に救いの手を差し伸べる仕事をしてましてですね~。これからランダムで選ばれたゲームに勝てば、あなたの借金をチャラにするどころか、お金持ちにまでしてみせましょう。どうです?やりませんか?」
そんなのメリットしかないではないかと考えた男は瞬間的に頷いていた。
「ではでは~。こちらの契約書にサインをお願いしま~す」
いつの間にか現れたペンとA 4サイズの紙を受け取り、言われた場所にサインをする男。
「は~い。ありがとうございま~す」
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