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青年はその紙とペンを受け取ると、それをそのまま上空に放り投げる。
そして投げられたそれらは空中でパッと消えた。
「さぁ!それでは始めましょう!今回のゲームは~?ジャンケン!」
「はっ?」
もっと複雑なものを想像してた男はまたもや呆気にとられる。
「はい、ではボクがグーを出しますので、あなたはパーを出してください」
「それは・・・心理戦のつもりか?」
「いえいえ~そんなんじゃありませんよ~。ただの事実です」
「信用ならんな」
「信じるか信じないかはご自由に。ただし、このジャンケン、負けたらあなたの存在が消失してしまうのでご注意下さい」
「何の話だ」
消失という聞き捨てならないワードを聞いて怪訝な表情になる男。
「あれ?さっき契約書にサインしていただきましたよね?その記述の通りですが」
そう聞いて男はさっき自分のサインした紙を思い出す。
そんな事は一切書いてなかったと言いたかったが、言えなかった。ちゃんと契約内容を確認してなかったからだ。
「お前っ!騙したな!」
「騙したなんて人聞きの悪い。ボクは一切、嘘はついてませんよ。あなたがデメリットの部分を見落としただけです」
その言葉を聞いて男は逃げ出そうと出入口の方に走り出そうとする。しかし1、2歩動いたところで、体が前に進まなくなった。
「おっと。言うのをわすれてましたね。さっき私がゲーム開始を宣告した瞬間に私達2人は現実とは別の空間に移動しました。見える風景は一緒なので少々分かりずらいですがね」
「嘘・・・だろ?」
男は膝から地面に崩れ落ちる。
「おい!誰か!気づいてるんだろ?助けろよ!」
見えない障壁のようなものを拳で何度も叩きながら外に助けを求める男。しかし誰一人として彼の方を見ようとはしなかった。
「え~っと。お取り込み中に申し訳ないんですけど、早く始めてもらって良いですか?ボクにも次の現場があるので」
トントンと右手の人差し指で左手の手首を叩く青年。
「てめぇふざけんなよ!人の命を何だと思ってんだ!」
それを見て激昂した男が掴みかからんばかりに接近する。しかし青年の前にも見えない障壁があって近づくことができなかった。
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