バイバイヤー

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「それをあなたが言いますか。他人が死ぬ気で働きながら払っている血税を何もせずに受け取って、こんな事ばっかりに使ってるあなたが」 「くっ・・・」  痛いところを突かれて言葉が出ない。そんな男を見て、やれやれとため息を吐く青年。 「まぁ、死にたくなければボクにジャンケンで勝てば良いだけの話ですから。勝てばこの空間から解放され、また新たな、それも輝かしい生活が送れることでしょう」  そうだ、勝てばいいんだ。男はそれを思い出して、また気持ちを持ち直した。 「では始めますよ?ジャンケン」  声は聞こえてくるものの青年の手はお腹のあたりで握られたまま、一向に動く気配がない。  どうやら本当にグーを出すつもりらしい。  男はギリギリまで引き付けて、相手の手が動かないのを確認してからパーを出した・・・つもりだったのだが。 「へっ?」 「もぉ~折角グーを出すって言ってあげて、尚且つあからさまにグーで待ってあげてたのに~。残念ですがボクの勝ちですね。では、また来世でお会いしましょう」  男の手は開いてなくて、代わりにピースの形が作られていた。すなわち男の負けだ。 「ふ、ふざけるな!今の絶対なんか仕掛けてたろ!こんなジャンケン無効だ!」  しかし今のジャンケンに不正が無かったことは男が1番理解していた。男は最後の最後で信じられなかったのだ。青年がグーを出すという、今となっては事実を。 「あぁ~よくいるんですよね~。そうやってイチャモンつけてくる人。でも結果は変わりませんから。それでは、バイバイヤ~」 「おい!なにいってんだ!おい!うっ・・・」  満面の笑みで手を振る青年を見ていたその時。心臓がきゅ~っとしまっていくような感覚と頭がかち割れてしまいそうなくらいの頭痛に男は襲われる。 「ああぁあああああ!」   そうやって頭を抑えながら地面をのたうち回っていると次第に目も開かなくなっていって、意識も朦朧としてきた。遠くの方では救急車を呼ぶ声が聞こえてくる。 「お前・・・絶対に許さな・・・」  ぼやけて見える青年に向かって、そう呟いたところ意識が途切れ、男は命をひきとった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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