弐之匣 第二十五話 ある宗教と友人 其之四

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「彼はまだここにいますね…。多分、これ以上この家から自殺者を出さない様に見てるんだと思いますよ…」 「いや…もう宗教はこりごりなんで…」 友人の父はそう言って笑っていました。 Fは自分の話を始めました。 自分は宗教家ではない。 ただ少し不思議な事が出来る…。 そんな話だったように思います…。 「少しだけお経をあげさせてもらっていいですか…」 そう言うとバッグから自分の数珠を出して、仏壇の前に座りました。 友人の父と母も一緒に友人の後ろに座ってました。 私はその後ろに座りました。 二十分くらいFはお経をあげていたのでしょうか…。 友人の父と母は不思議な光景に思えたかもしれません。 当時の今風の自分の息子と変わらない男が普段着のままお経をあげているのです。 しかも見事に…。 二十分…もっとだったかもしれません。
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