弐之匣 第一話 足跡の無いカップル

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友人の新車の中は、現地についた頃にはタバコとビールとつまみのサキイカの匂いで最悪でした。 運転手の友人だけは一人ポカリスウエットなんかを飲みながらひたすら運転してましたからね。 新車だし、誰かに運転させるのも嫌だろうという私たちの気遣いです。 温泉旅館は決して新しい旅館ではなかったのですが、すごく立派な旅館で、部屋も十人は泊まれる大きな部屋を準備して頂きました。 早速、部屋着にみんなで着替えて、温泉に入ったり、ゲームコーナーで遊んだりして夕飯までの時間を潰しました。 私は風呂に長時間入るのが苦手で、一番に出て、ゲームコーナーでパチスロを回してました。 館内は暖房で暑くて…。 冷たいジュースを飲みながらタバコを吸ってパチスロを回していたのですが、それが出るわ出るわで…。 換金はできないのですが、その出たコインで景品がもらえるのでたくさん部屋に持って帰りました。 部屋に戻ると、みんな畳の上に転がってました。 「何か男だけで温泉とかって…寂しいよな…」 一人の友人が言います。 「アホか…こういうところは男だけで来れば、そういう楽しみ方があるんや…」 そう言ったのは旅行会社の友人でした。 「ちゃんと調べてあるから…」 あーなるほど…。 こいつら…。
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