第1章 香澄

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「はじめまして、だよね?僕一条っていうんだけ……」 「あ、一条香澄。言われなくてもそりゃ有名だから知ってるよ。お前俺なんかに話かけてていいの?それにしても噂通りやっぱすっげえ綺麗な顔してんな」 「……ああ、そっか。それより名前、なんて言うの?僕のことは下の名前で呼んでくれていいよ」 「俺は山川祐介。てかお前何で俺なんかと友達になろうとしてんの?お前にはもっとイケてる奴の方が合ってるよ。だって俺なんか」  ああ面倒くさい。イケてるやつらって?あの運動部の汗臭そうな筋肉豚のアイツらとか軽音楽部でイキリ倒してるチャラいだけのあの勘違い野郎達のこと?ただのうるさいガキじゃんか。それに僕はそういうやかましいタイプでもないし、ああいったノリには合わせられないし…… 「あ、引き立て役。自分の引き立て役探してるんだ?」  山川は言った。何か面倒になって僕はその場を去ろうとした。 「ごめん、嘘だって。俺さ、お前みたいなやつに話しかけられたことなんかなくてさ。なんていうか…… ちょっと緊張」 「え、緊張?」 「とりあえずお前イケメン過ぎるだろ。こんな人間生まれて初めてみたよ。まあ、今日からよろしくな。か、香澄」 「うん。こちらこそよろしく、山川」  ひと悶着あったもののなんとか繋ぎ止めた。やっぱり一人では居たくないんだ。誰か一人でもいいから、友達と呼べなくてもいいから自分の横にいてほしいんだ。
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