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「大ちゃん」
真友子は、大きな背中に回した手で、そっと大祐を抱きしめ返した。
「ありがとう。綺麗って言ってくれて、嬉しい」
そして、優しく顔が見たいと大祐を促してみる。
すると、躊躇を滲ませ少し間をおいてから、真友子を抱きしめる大祐の腕が
おずおずと緩められた。
大ちゃん。
真友子は、ションボリする大祐の頬を片手で包み、柔らかく微笑んだ。
「ドレス、気に入った?」
うん。
手の中の大祐の顔が、コクンと頷く。
「どっちの方が好き?」
フワフワ……。
呟く大祐の頬を優しく撫でながら、真友子も頷いた。
「うん。じゃあ、フワフワの方でお願いしておくね」
しかし、この日の事は単に二人の間の出来事ではなく、明らかに本番当日の
予兆だった。
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