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エレガントなマーメイドドレスを纏い、少し体を捻るようにしてみる。
しかし大祐は、相変わらず強張った顔ままで、「うん、きれい」と呟くように言うだけ。
そんな彼の様子に、空かさずスタッフはフォローに走った。
「あっ、ご主人様は、ふんわりドレスがお好みとおっしゃってましたものね。
そちらの方も、お試しになられてはいかがですか?」
だから真友子は、ちらりと淡い苦笑の眼差しをスタッフと交わし、
素直に試着室へと戻っていった。
しかし、試着の最中に何かあったのか。
今度はオーガンジーをたっぷりと利かせたフワフワスカートのドレスで出て
みた時には、既に私服に着替え終えた大祐の顔は、完全な仏頂面。
そして、隙なく暗雲が立ち込めた空気に、真友子もスタッフもこれ以上の
試着は無理だと思えた。
「あの、私はどちらも気に入りましたので、お返事は一週間以内にさせて
頂きます」
取り繕うように笑顔をスタッフに向け、真友子は、なぜか憮然としている
大祐を連れ出す。
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