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20 道のりは易からず(つづき)
「何言ってるの。どうせ忠昭は、図星だったんでしょう。
それに真友子だって、こんな風にホンワカ優しい方だから
惹かれたんでしょうが。何十年、母をやってると思ってるの」
だが、こうして無事に結婚の承諾も得られ、タラ腹おいしい食事をごちそうになった帰り道。
大祐は、それまでの緊張と睡眠不足のツケに祟られた。
「大ちゃん、もうすぐ着くわよ」
ペチペチと頬を叩かれ、ハッと我に返る。
「いけない、寝そうだった」
意識が飛びそうなくらいの睡魔と戦っていた大祐は、思わず独り言を呟いた。
だが、その彼の目の前で、真友子を含んだ何人かが小さく吹きだす。
「えっ? 何?」
「うん、後でね」
そして笑われた真相が語られる前に、最寄り駅に到着した電車の扉が
静かに開き、大祐は真友子に急かされ電車を降りた。
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