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少年が少女の後ろを歩くときは、どんなときか。
※少年の名前「ゴグル」、少女の名前「ホン」としました。
ゴグル「ねぇ、もうそろそろ、どこに向かっているのかくらい教えてくれてもいいんじゃない」
二人が駅を出てから、歩き始めて10分くらいたつ。前を歩く女の子はゴグルが繰り返し背中から声をかけてきても、ほんのり振り返るだけで、答えない。しかも、先日、駅前に開店したばかりのパン屋の『厚熱サンド』をひとりだけで食べている。
「もう、分かりました。黙ってついていきます」
季節は本格的な冬に差し掛かり始めた。時折つよく吹く風の一振り一振りが首筋から体を冷やし、ポケットに突っ込んだ手に思わず力が入る。
「今日の雪は朝になったら積もっていそうだね。列車が止まることはないだろうけど。このまえ校庭でカマキリの卵を見つけてね、太ももの真ん中くらいの高さにあったから去年よりは積もる日があるかもよ」少年は少女の返事を期待せずに、それでいて聞こえるようにつぶやいた。
金曜日の学校帰り、二人の家は近所で帰り道はよく一緒になる。教室から出ようとしたところで彼女から声をかけられ、着いてきてほしいところがあると言われ最寄りの駅を通り過ぎ、商店街前駅で下車した。
夕飯の買い物をするための人々が商店街を往来している。総菜屋の主人が売れ残りにならないように声を張り上げて、魚の揚げ物を売りさばいている。薬屋の店内では、油ストーブの前で一匹の白い猫がまるくなっていた。
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