中性的飽和

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私も部活へ行く準備をしていると、ポロンっと音がした。 スマホを手に取り文面を読む。 『どうしよう!歩くんが別れるっていうの!!』 呆気にとられたとしか言いようがなかった。 そんな素振りは微塵も感じられなかったから。 一花は彼一筋だし、まさか彼の方に好きな人ができたとか? 頭の中で考えていても答えは出てくるはずはない。 思い当たるふしもない。 『今どこ?』 『歩くんの教室』 『すぐ行く!!』 私は鞄を手に、急いで向かった。 少し息を切らしながら教室の扉を開ける。 後ろの窓際の席に座っていた二人に近づく。 「きみちゃん…。」 顔を上げた一花の目が真っ赤だった。 ハンカチを握る手が微かに震えていた。 その前に座る彼は一花を見ず、顔を背け、意識が何処か遠くの方に向いていた。 「えっと…歩くん、別れるってどういう事?」 私が訪ねるも、部外者は黙ってろと言わんばかりのスルーぶり。 その場の空気がより一層悪くなった気がした。 いたたまれない気持ちになる。 沈黙を破ったのは一花だった。 「私が歩くん以外に他に好きな人がいるんじゃないかって…。」 「え?」 「私の好きな人は歩くんだけなのに。」 「だよね、誰かと間違えてるとか?似てる人だったとか?  一花は二股とかできない。そんな器用な事できないよ。」 そう言って彼の方を見る。 「友達だから庇ってるんだろ。」 「いや、庇うとかそういう事じゃなくて…。」 話が進まない。否定し合っていてもループするだけだ。 急に彼がこちらを向き、言葉を発した。 「兄貴が見たって言うんだ。昨日。」 「昨日?」 「一花の事は兄貴にも話してるし、顔も知ってる。間違うわけない。」 とてつもなく仲が悪くない限り、家族の話は信用すると思う。 兄弟ともなれば尚更。疑う事を前提に考えない。 「えっと、ちなみにどんな感じの人といたとか、何処で見たとか聞いてる?」 「駅前にできた新しい雑貨屋とか言ってた。一緒に居たのは感じのいいイケメンだって。  写真撮ったからって画像も貰った。」 「昨日…雑貨屋…。ってか、隠し撮り…。」 色んなワードを聞き、疑念から確信へと変わり答えが出た。 またか…と思った。ただし「イケメン」というワードだけは明らかに違う。 あと隠し撮りはいけない。一花を知っていたなら、その場で声をかけてくれれば良かったのに。
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