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「それ多分、私だ…。」
「は?」
思いがけない言葉に怪訝な顔をする彼。
一花は「あっ!」と、声を上げた。
「そうだ!昨日きみちゃんと新しくできた雑貨屋に行った。」
「でも兄貴は男と一緒だったって…。」
彼が混乱するのも無理はない。
女が男に見えるわけがない。見間違うわけがない。そう思うのが普通だ。
例外を除いて。
「お兄さんは私の存在も顔も知らないんだよね?」
「うん。」
「その写っているのが私だっていう事を証明できればいいって事だよね。
お兄さんの撮った写真見てみて。その時にどんな格好をしていたか言うから。」
「わかった。」
素直に頷ずくもどこか半信半疑な彼がスマホを手に取り、貰ったという画像を見る。
それを確認してから私は言い始めた。
「首にヘッドフォン、黒のジップアップのパーカーで、フード部分は赤チェック柄。
中は白。下は…。」
「いや、もういい。」
「?」
「写真はガラス越しだし、写ってるのは上半身だけだから。それに着てるもの当たってる。」
そう言って、写真を私達に見せてくれた。
「うわ~…きみちゃんイケメン…。下向いてるから顔わかんないね。」
「顔が見えてたら俺だって間違わない。多分…。」
写真を見て言葉が出てこなかった。
一花との身長差があるせいか、写っている私達はまるで恋人の様に見えた。
自分で言うのもなんだが。
「そういえば前に電車に乗ってた時、私の隣に座ってたおばさんに
『彼氏?』って聞かれた事あったよね?」
「あった…。」
「違います。って言ったら『ごめんなさいね』って言われたね。」
「言われたね。」
そういえば、過去にも性別を間違われてしまった事はあった。
運動部に所属しているせいもあり、髪はバッサリと短め。
服装もシンプルで動きやすいものを好む。
化粧っ気もないので、おのずと外見はボーイッシュになる。
初対面となると微妙な位置にいるのだろう。
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