中性的飽和

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「本当にごめん。」 顔の前で手を合わせ、彼が頭を下げた。 一花と顔を見合わせる。   「それは誰に対して?私?それともきみちゃん?」 「どっちも…二人に対して。」 心の底から申し訳なさそうにしている。 「まぁ誤解は解けたし、一件落着って事で。」 「きみちゃん甘い!きみちゃんだって男の人に間違えられて。  それに、私の身にもなってよ。別れるって言われた時の辛さったら…。」 「一花ごめん。一方的に別れるとか言って。俺、あんまり一緒にいてやれないし、  だから…一花に俺以外の好きな人できても引き留める権利ないかなって。」 「私の好きな人は歩くんだけ。あんまり一緒にいれなくても、今は幸せだよ?」 二人のやり取りに胸がむず痒くなり、ほわほわとした空気感に耐えられなくなってきた。 「あ~ご馳走様でした!私そろそろ部活に行くね。」 「きみちゃん、ありがとう。」 ヒラヒラと手を振り、その場から離れる。 早く二人きりにしてあげねばとも思ったからだ。 ふと、一花の悩みの種が頭をよぎったのできびすを返す。 「一花ちょっと。」 ちょいちょいと手招きし、頭を傾げる一花の耳元に口を寄せる。 「歩くんもちゃんと好きでいてくれてるじゃん。むしろ愛されてる。」 そう言った直後、一花の顔がみるみる赤く染まっていく。 「じゃあね」と言い残し、今度こそ教室を出て行った。 明日はきっとのろけ話に付き合わされるのだろう。一花の幸せそうに話す顔が目に浮かぶ。 「あー髪伸ばそうかな…。部活に支障が出ない程度に。」 その言葉は誰もいない廊下に響き、自分の中で静かに消えていった。  
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