とけるアイス

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 昼休み。  高校生の幸太郎は教室を後にして、二階の階段をのぼる。  目指しているのは二階の奥に潜む空き部屋。  俺は疲れ切った顔を消して満遍な笑顔で空き部屋の扉を開けた。  何故、笑顔になっているか自分でもわからない。  だが、一つ。心当たりがある。  それは解けない謎があったからだ。  今朝の話。 「ねえ幸太郎くん!」  可愛らしい声が耳元が聞こえる。  俺は教科書を鞄から取り出して、その声に従って顔を上げた。  黒い髪の大きな瞳の少女が顔をのぞかせていた。  名前は半田千和。 「なにか用かい?」  俺は思わず素っ気ない言葉を返す。 「なんか冷たいね」  千和は頬を膨らませてにらみつける。  同時に周りの男性たちはこちらを、というより俺を睨みつけてくる。  額に汗が滲む中、千和はあっと人差し指を顎に当てた。 「そうそう」  千和は鞄から小さいタッパを持ってきた。  中にはオレンジや水色など、子供が好みそうなアイスバーが収納されていた。 「食べてみてほしいの」 「食べる?」 「いいからいいから」  途端に、千和はオレンジのアイスバーを俺の口に放り込む。  口は冷え冷えになり、俺は慌ててアイスの棒を掴む。 「ごっごめんなさい!」     
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