遺品

3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 「お祖母ちゃんに、貴方に渡してって言われていたものがあるのよ。」  母が、本棚の横にある古い箪笥の一番上の引き出しの中から、大事そうに油紙に包まれたそれを取り出した。  「まだまだ使えるものだから、たまにでいいから身に着けてって。」  そう言って、私の両手に包みを置いて母はシャワーを浴びに部屋を後にした。  (なんだろうか?)  油紙を開くと青いスエードの箱が出てきた。指輪のケースだろうか?金色に刺繍された表面の文字を見て、私は怖くなった。先ほど手に取った本も魔術の本だった。お祖母ちゃんは宇宙人とか魔法とか不思議な物が大好きな人だったのだ。宇宙と魔法の話なら小説や映画はいざしらず、漫画やアニメもなんでも見ていて、観る前に内容を当ててしまうような人だったから。もののけを見たなど怖い話で良く泣かされ、時には失禁したのも思い出した。  「お母さん、怖い、早く来て!」  まだ着替えているだろう母を呼んだ。案の定、母はバスタオル1枚の姿で部屋に入って来た。  「『とける』って書いてる!きっとお祖母ちゃんの魔法な何かの……。」     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!