2話

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 セイトが短く呟くと、ベッドに座り込んでいるヨシキの隣に座り込んだ。そして、ヨシキの身体を抱き寄せて顎を持ちながら、セイトはヨシキの顔をまじまじと見つめる。端正な顔立ちというよりは、可愛らしい童顔な顔立ちをしている。色白の肌は生クリームの様に甘い匂いがして、少しだけ潤んだ黄緑色の瞳はマスカットの果実の様に美味しそうで、思わず舌なめずりをしそうになる。美味しい獲物を目の前にすると、自然と食べたいという欲求が刺激される。セイトはじっと見つめながら、ヨシキに確認するように問いかける。 「キスするぞ」 「……っ、はい」  そうセイトが告げると、ヨシキの柔らかい唇に口付けをする。人生できっと初めてする口付けだというのに、ヨシキとのキスは苺の様に甘酸っぱい味だった。味覚を失ってから久しぶりに味わう甘い味にセイトは目を細めて、ヨシキの頭を固定して逃がさないようにする。  ヨシキの柔らかい唇はマシュマロの様に甘く、ヨシキの唾液はシロップの様に甘い。ヨシキの咥内をじっくりと、ねっとりと、味わい尽くすかのようにセイトの紅く分厚い舌が這いずり回る。ヨシキの唾液を一滴たりとも、零したくてじゅるっと吸い付く。ヨシキは酸素が足りずくらくらとしだしたのか、呼吸が出来なくて苦しいのか、セイトの胸を叩いて潤んだ視線で訴える。セイトは口を少し離して「鼻で呼吸しろ」と告げると、ヨシキの唇に深く口付けをする。甘い、とても甘い。フォークの人間がケーキの人間を捕食してしまう理由も分かってしまう気がした。けれども、同時に、この甘いヨシキのことを、じっくりと、ゆっくりと、独り占めして、堪能していたいという欲求もセイトの中に生まれていたのも分かった。
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