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★復活を果たす白魔女様★
森で自分のクローンと戦っていた私、でも私は敗北した。
即死魔法をあんなに撃ってこられたら誰だって勝てませんよ。
はぁ、私はどうなっちゃうんだろう……やっぱり地獄行きかなぁ。
まぁ当然か……私は私を信じる人たちを裏切り、更にはその人達の大切な仲間もこの手にかけたのだから地獄行きは当たり前。
だけど、だけどやっぱり怖いよ。死んだら最後苦しめられるのは嫌だ!
勿論こんなのは身勝手だって分かっているけどそれでも怖いよ!
「こわい、こわいよぉおお! 誰か、誰か助けて!」
「五月雨さんでも誰でもいい! このまま死ぬのはこわい!死にたくないっ! こんな闇の中に一人でいるのは寂しいよ」
「…………あははは、私ってばバカだな、こんなところで騒いでも誰も助けに来るわけないのに、ほんとバカみたい……。」
「うぅ……こわいよぉ、ぐすん………。」
誰か……誰か………。
「泣くんじゃないわよ水無月、貴女はまだ死んでないわよ」
「え? その声は五月雨さん? 助けに来てくれたんですか?」
「そうよ、まぁ貴女は死んでないから助けに来たというよりは呼びに来たと言った方が正しいかしら」
「そうなんですか? というか私は即死魔法をくらったはずじゃ」
「えぇくらったわよ。だけど貴女はまだ死んでないわ。まぁもっとも貴女の身体は仮死状態で地面に転がっているけどね♪」
「仮死状態!? 何でそんなことになっちゃったんですか?」
「そうねぇ、簡単に言ってしまうと超強力な呪文を貴女にかけたから身体に負荷がかかりすぎて現在仮死状態になってしまっているのよ」
「そうなんですか、ちなみにどんな魔法を私にかけたのですか?」
「運命という時を変える魔法よ」
「ほえ? なんですかそれ?」
「……貴女は確かに即死魔法を受けた、でも魔法をかけたことによって即死魔法を受けたという時間はなくなり代わりに受けなかったという時間に置き換えたの」
「だけどもこの魔法は膨大な魔力が対象者にすごい負荷をかけることになるから身体が耐え切れずに仮死…いや瀕死状態になってしまった」
「なるほどなるほど……ってぇ、それだと意味ないじゃないですか!」
「即死しなかっただけ感謝しなさい! 魔法をかけなければ今頃貴女は地獄行き決定よ!」
「ガーン! やっぱり私は地獄行き決定なんですね………。」
「当たり前じゃないのよ♪」
「ひどいっ!」
あうう、こんなところでまで意地悪です五月雨さん。
でも私を迎えに来てくれたってことは少しは私のことを心配してくれて……。
「何落ち込んでいるのよ、さっさと行くわよ。貴女が起きないと私は動けないから迎えに来たのにくずくずされてたら困るわよ」
前言撤回です、五月雨さんはひどい人です。
目的のためなら手段を問わずに行動をする残忍な性格です。
でもよく考えたらこの人は私自身なんですよねぇ。
毎度毎度思うことですが記憶を取り戻して大人に戻ったらこんなひどい人になっちゃうと思うと元に戻るのが嫌だと
思ってしまいます。
でもそういうわけにはいかないんですよね。
私が元に戻ることを拒んだら本来の目的が達成できなくなってここまでやってきたことが無駄になってしまいますからね。
ですから正直気乗りはしないですが今は仕方がありません、私も五月雨レイ、いつかは元の姿に戻り目的に向かっていかないといけないですから。
「わかりました、ただここから出る前にもう一つお聞きしたいことがあるのですが」
「なによ」
「もしクローン体に私が殺されていたらあのクローンは消えていましたか?」
「そうねぇ、今のクローンは私たちのクローン体というよりは別個体としての存在になっているから消えないわね」
「前にも話したけど、私が操るクローン体は私が消えればクローンも消えるの」
「だけども今は私の支配を離れて完全独立個体になっているから私が消えてもクローンが消滅することはないのよ」
「ちなみに本体の貴女が死んだ場合私の存在が消えるかは前回同様わからないわ」
「なるほどわかりました、ありがとうございます五月雨さん」
「どういたしまして、それじゃあ行きましょうか」
「はい」
「まぁ行くというのは正確ではないか、いい?三、二、一で目覚めなさい」
「わかりました」
「よしっ! では三、二、一、起きなさい水無月レイ!」
パチっ!
私は五月雨さんの合図とともに目を覚ましました。
そして身体がすごくだるいし痛みも感じます。
多分魔力の負荷に耐えられず瀕死状態になっていたからなのだとは思いますが中々きついです。
「うぅ、結構つらいです」
「それにしてもクローン体がいませんがどこにいるのでしょう」
「そんなの貴女を殺せたと勘違いしながらどこかに歩いて行ったわよ」
「そうですか……ということは生きていることがバレたらまた殺しに来るということですか?」
「まぁそうね、だけど今度は返り討ちにすればいいのよ」
「そうですね! それじゃあ行きましょう!」
そうです、今度こそ見せつけてやるのです!
この水無月レイが……いや、この五月雨レイが本物の力というものを見せてあげる。
「……………。」
水無月レイが瀕死になったとき少しだけその魂に私の記憶の一部を移せたから移したけど、前より五月雨レイの存在に近づいたわね水無月レイ。
でもそれでいいのよ、そうすれば貴女は完全なものになり私の役目も終わる。
「ところで水無月レイ、ここから移動するのにまさか徒歩で行く気ではないわよね?」
「当り前じゃないですか……。何でそんな苦労をしなくちゃいけないのかしら?」
「そうよね、ならば移動魔法を貴女は使えるのかしら?私が魔法を唱えてあげましょうか?」
「けっこう、そんな魔法くらい私が使えないとでも?」
「ふふふ、そうね♪ 貴女が使えないわけないわよね、失礼なことを聞いたわね」
「それにしても今の貴女はいいわよ水無月レイ♪ 徐々に五月雨レイ本来の性格や話し方になっている」
「それはつまり無垢な幼き状態を卒業して元の姿に戻ろうとしているということ」
「ということは五月雨レイ復活の日も近いわぁ♪」
「そうでしょ? 五月雨レイ」
「……そうね、私は水無月レイから五月雨レイに戻ろうとしている」
「盗られた記憶はまだ鮮明に思い出せないけど、性格は戻ってきた気がする」
ゴーン!
「そして! 私は五月雨レイとなり復活するわ!」
水無月レイの姿が『ゴーン』と鈍い音とともに変わったわね。
大人の……五月雨レイの姿へと!
まぁちょっと前の時とは姿が違う気がするけどそこは誤差ということで気にしないでおきましょう。
「では五月雨レイ、行くわよ! まずはクローン体から倒し、その後エルマたちを見つけ出しなさい!」
「もちろんそのつもりよ! 覚悟しておきなさい三人とも、必ず復讐してやるっ!」
「ワプル!(転送せよ!)」
必ず勝ってやる……必ず!
この反応、まさかオリジナルか!
なぜかしらね、ちゃんと殺してあげたはずなのに。
生き返ったということかしら? だとすればしぶといわね!大人しく死んでいればいいものを。
だけど少し妙ね、何だかさっきとは別の……五月雨レイの気配をオリジナルから感じる。
いったいなぜかしら?
いや、今はそんなことどうでもいいか。
今考えるべきことは私を殺しに来るあの女をどう始末するか。
それを考えなくては今度はやられてしまうかもしれない!
考えるのよ、この私だって五月雨レイなんだから策を練れば勝てるはず。
まずは状況整理ね、オリジナルはまだここには来てないようだけどすぐにやってくるでしょう。
そしてこの気配から察するにオリジナルは記憶を少し取り戻して五月雨レイになっている可能性がある。
でもあの剣のレイの気配も感じるからまだ融合をして完全復活ではなさそうね。
ならばまだ勝機はある! あいつと私の差は意思を持つ剣があるかないかの違い、ならば勝てる!
しかも五月雨レイとしての戦い方は今のオリジナルより私のほうが上、ならば勝機以外ない!
ブンっ!
「どうやら来たようね、オリジナル……殺気がすごいわよ」
「ふふふ、そうねぇ……貴女には一度殺されかかったから今度はこの私が殺してあげる」
「エンド・オブ・ザ・タイム!(時間よ止まれ!)」
時間を止める気ね、そうはいかないわよオリジナル!
「エンド・オブ・ザ・タイム!(止まりなさい時よ!)」
ゴーン!
「ちっ、やはり時止めの回避方法を知っていたか……。」
「当然よ、私は貴女なのだからそのぐらい分かるわ」
「そう、ならばこれはどうかしら?」
「デリエスル(生命活動を停止せよ)」
ギャオン!
「即死魔法ね、でもそれがどうしたというのかしら?たった一発じゃ私に避けられて終わりよ?」
「慌てないの、ここからが本番よ♪」
「スピード・オブ・ザ・タイム!(時よ加速せよ!)」
ギューン
「なっ!? 即死魔法のスピートが二倍に加速したですって!?」
やばい! このままじゃ当たってしまう!
しかもこの魔法追尾式なのか何回かわしても襲ってくる。
こうなったら!
「スロウ・オブ・ザ・タイム!(時よ減速せよ!)」
グゥーン
「へぇ~ 時を加速させた魔法を減速させて通常のスピードにしたというわけね。やるじゃない、さすがは私の偽物というわけね」
「だけど追尾はまだまだ続くわよ? さぁどうするのかしら♪」
「はっ! 貴女一番よく知っているんじゃないの? オリジナル」
「ギエルディアデス(破壊せよ)」
ガシャンっ!
「まぁそうよね、普通そうするわよね」
「今度はこっちの番よ! 同時魔法を食らいなさい!」
「ダグルメア!(闇の砲撃よ)セルティエル!(光の弾丸よ)」
「光と闇の砲撃を受けなさい!」
「光と闇の弾幕を飛ばしてきたわね、ならば!」
「ハルシャエル!(魔法よ反射せよ!)」
カンッ!
「なっ!? 魔法が反射された!? やばい! 全部こっちに!?」
ドガンっ!
「ぐあっ!」
「ふふふ、自分の魔法でやられるなんて間抜けね♪ 所詮は偽物だわ」
「なめるんじゃないわよ! ヒライセス(癒しなさい)」
「へぇ~ 驚いたわ、まさか私が使えない魔法を持っているなんて」
「痛みの代償を払わずに治癒させる魔法のようね」
「そうよ、この魔法は貴女には使えない、ということは私のほうが優秀ということよ! だからオリジナルは消えなさいっ!」
「いやよ、娘を守るのはこの私、五月雨レイよ!」
…………五月雨レイの頃の記憶が戻りつつあるわね。
娘を護ることも徐々に思い出しているようだし安心したわ。
これならばもうクローンに負けることはなさそうね。
さてと、もう少しこの戦いの行方を黙ってみてますか♪
あぁでもアドバイスくらいはいいわよね。
「レイ、貴女に一つアドバイスをするわ」
「アドバイスですって?」
「そうよアドバイス、彼女の弱点を教えてあげる」
「弱点を? ならば早く言いなさい」
「あらあらすっかり口調が変わって、まぁいいわ。弱点というのは彼女の身体が魔力でできていること、つまり魔力が完全に無くなると彼女は消えてしまうのよ」
「なるほど、魔力を完全に消滅させるとクローン体も倒せるということね」
「そうよ、まぁ実体はあるから即死魔法を当てれば殺せるでしょうが彼女は即死魔法が当たるようなミスはしない。ならば別方法で攻撃するしかないのよ」
「だがあの偽物はさっき傷を回復させていた、つまり魔力を奪わなくても攻撃を当て続けていれば倒せるのでは?」
「……貴女はまだまだ水無月レイの思考が残っているようね」
「いい? 貴女が今言ったように彼女は傷を治す魔法を持っているのだから攻撃し続けていたらいずれこちらの魔力のほうが尽きてしまうわよ?」
「前回レン達に敗北した敗因は魔力切れによるもの、貴女はそんな愚行をまた犯そうというのかしら?」
「わかったわよ、じゃああの偽物の魔力を吸い尽くせばいいのね?」
「そうよ、魔力を奪う魔法はご存じかしら?」
「当然知っているわよ、だけどこの魔法は近距離魔法だからどうやってあの偽物にくらわせようかしら?」
「そうね、なんとか時間を止めないと恐らくその隙は生まれないわよ」
「時間ね……でもあのクローンは私と同じ魔法を持っているから普通に考えて止めるのは無理な話よ」
「それでも考えて行動するのよ! 死にたくはないでしょ?」
「……いいわ、イチかバチかだけどやってみましょうか」
「何か思いついたようね」
「えぇ、そろそろ時間停止の魔法が切れるからそこで決着をつける!」
「それに、向こうは何か魔法を放とうとしているのかこちらが会話できるくらいの猶予を与えてくれているし、どちらにしてもこの後の行動次第で勝敗が決まるわね」
「五、四、三、二、一、時間停止が解除される!」
ゴーン!
「ふふどうやら時が解除されたようね。でもオリジナル、貴女は動けない!なぜなら貴女の唱えた時止めが解除されても貴女より後に唱えた私の時止めはまだ持続しているから!」
「つまり貴女は一秒だけ今時間を止められている!時間高速魔法を私自身にかけてあるから一秒あれば十分!死ねぇえええええ! デリエスル!(生命活動を停止せよ!)」
ギャオン!
「貴女は終わりよ!」
「………ばぁか、まんまと引っ掛かってくれたわね、ウルバイン!(魔力を奪え!)」
「なにっ!?」
「この時止めの瞬間に貴女が私の目の前にきて即死魔法を打つのは予測済み」
「いやむしろしてもらわないと困ったわ」
「そんな! 即死魔法がオリジナルの手に吸収されていく!」
「ふふふ、それだけじゃないわよ! このままこの手を貴女の首に!」
ガシッ!
「うぐっ、あがっ!」
「このまま貴女の魔力を根こそぎ奪い消滅させてあげる!」
「かはっ! い、いやぁ、やめてぇ!」
「暴れないの、往生際があるいわね。大人しく死になさい!」
ギューン
「あ…あぁ……子供たち…………。」
「………どうやら魔力を吸い尽くしたようね、偽物の存在が消えたわ。まったく、所詮は偽物、本物に勝とうだなんて身の程を弁えなさい! 」
「どうやら勝てたようね、そしてクローン体の魔力を取り込んだから貴女の力が上がったようね。今なら回復魔法を使えるのでは?」
「そうね、確かに記憶もそのまま引き継がれているようで使い方も頭に入ってる」
「そう……ならばレイ、もう一つレン達を探す前にやることがあるわよ」
「何よ? まだ何かやることがあるっていうのかしら?」
「そうよ、この剣の力……五月雨レイの記憶であるこの私をその身体に取り込みなさい」
「恐らくクローン体を取り込んだように魔力を吸い取る魔法を使えば私を取り込めるはずよ」
「なるほどね、でもそんなことしたら貴女はどうなるのよ?消えてなくなってしまうのではなくて?」
「忘れたのかしらレイ、元々私と貴女は一つの存在だったのよ?私が取り込まれるということはただ一つに戻るだけ、消えるというのは正確な言葉ではないわ」
「それにこれで私と一つになるという目的は達成できる、それはつまり娘を護ることに繋がるのよ」
「そしてあのレン達に勝てる可能性も高くなる、まぁ記憶を取り戻している時点でレン達と無理やり戦わなくてももういいのだけど」
「たけど、負けっぱなしっていうのは貴女のプライドが許せないんでしょ?」
「当り前よ」
「ならば取り込みなさい、そして強くなりなさい!」
「…………わかったわ、今までありがとうね私」
「どういたしまして私」
「そしてクローン、さっきはあんなこと言ったけど思いは私と同じ、貴女のその思いを私が受け継いだわ、だから安心して休みなさい」
「……ウルバイン!(魔力を奪え!)」
ギューン
「おやすみなさい、私」
「おやすみ、私……ちゃんと娘達を護るのよ」
「当然よ」
「………………。」
声が聞こえなくなった、魔力を吸い尽くしたのだろう。
そして私たちは融合した、その証拠に全ての記憶を取り戻した。
これが本来の私、五月雨レイの復活よ!
「はぁ、やっとこの時を迎えられた、どれほど待ち望んだことか」
「これで復讐できるわぁ、覚悟しなさいよ!」
私はレン達のところへ向かうため瞬間移動の魔法を唱えた!
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