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★魔女様との別れ★
レイを倒してから二週間後、俺は久しぶりに外で次元粒子を見つけた。
しかもこの粒子を発見した時に不思議な感じがした。
どういうわけかは分からんが、呼ばれている感覚がして暫く森を歩き続けたら見つけたという感じだった。
だから今回は結構期待している。
ちなみに現在その粒子をもとに次元の道を作ってもらっているところだ。
そういえば全然語ってなかったが、現在ハムスターのレイとプチは行方不明だ。
レイがいなくなった時からいなかったのだ。
でもまぁアイツらはアイツらで楽しくやっているだろうから問題ない!
というわけでそこまで心配はしていない。
そもそも何かあっても死ぬことはないしな!
だって元々死んでるわけだし。
あぁ、死んでるで思い出した。結局ディアボロスの幽霊はあの後、三日ぐらいしたら成仏して天に旅立っていったよ。
何だかもう未練はないって言ってそのまま消えてしまった。
でもまぁそれがディアボロスにとって幸福なら俺は何にも言わないさ。まぁ本音を言えば少し寂しかったが……。
「レンく~ん、出来たよぉ」
おっ? どうやら道が出来上がったようだ。
それでは行くか!
現在前にも通った次元の道を俺は歩んでいた。
今度こそ元居た世界であることを願って出口を出た!
「…………。」
出口を出ると、そこには見慣れた光景が広がっていた。
「おぉおおお! ここは間違いない! 俺が異世界に飛ばされる前までいた場所だ!」
「そうか…よかったね……レン君………。」
「あぁ、エルマのおかげだよ! 今までありがとな♪」
「うん、こちらこそありがとう! それじゃあさようなら」
「あぁ、さようなら……だけど、また会えればいいな♪」
「それは無理だと思うよ」
「どうしてだ?」
「それはあの世界にもう一度移動が出来るかは奇跡と言っていいほどの偶然がない限り無理だし、それに……。」
「それに?」
「ごめんねレン君」
「えっ!?」
「メモルディアエル(記憶を失え)」
「なっ?! どうして? エルマ!」
「本当にごめんね、レン君……ワプル(転送せよ!)」
「エルマぁああああ!」
ブンっ!
「これでレン君は異世界の時の記憶が全部消えた、つまり私のことももう思い出せない」
「仮に思い出せたとしても、異世界移動なんてありえないから夢だったに違いないと思うはずだ」
「レン君、これが世界のルールなんだ。異世界から元の世界に戻った時、今まで体験した記憶は全部失わないといけない」
「そうじゃないと争いの元になるかもしれないからね」
「だからレン君は私に二度と会うことはできない」
「さようなら……レン君」
「ただいまぁ、あぁ~ 疲れた~」
「お帰りなさいレン、夕飯出来てるわよ」
「ああ、ありがとう母さん。でも先に風呂に入りたいから夕飯は後で食べるよ」
「はいよ、わかったわ」
「それにしてもレン、アンタ背伸びたんじゃないの?」
「そうか? 自分では分からないけど伸びたのかな?」
「伸びてるわよ」
「ふ~ん、まぁいいや。それじゃあ風呂入ってくる」
俺はすぐに風呂に入りたかったので足早に浴室に向かいシャワーを軽く浴びてから風呂に入った。
「ふあぁぁあ、やっぱり風呂はいいもんだなぁああ、心や身体の疲れが取れていくぅうう」
「………それにしても俺の記憶がおかしいのか分からないが、家に帰っていく前に何かあった気がするが思い出せない」
「俺は確か変な噂を解明するために森に行ったところまでは覚えているが、その後どうやって森を抜けたのか記憶がない」
「まるでその部分だけ記憶を切り離されたように感じたが、多分俺がぼぉ~としながら歩いていて覚えてないだけなんだろうな」
「はぁ~ まぁこれで噂はただの噂で、デタラメだったということがわかったから良しとするか!」
「………そろそろ出るか」
ジャバン
「そういえばもう一つ不思議なことがあったなぁ」
「脱衣所で服を脱いでいた時だが……。」
「『紫色の長い髪の毛』が服についてたんだが誰の髪だったんだろうか」
「まぁいいか♪ それより身体拭いてさっさと夕飯食いに行こう♪」
レン君とお別れした後、自分の家に戻ったがシーンとしていた。
まぁ当然か、もう誰もいないんだ……今まで通りに戻ったんだからむしろ物音がしていたら逆に怖いか。
「あはは……はぁ………。」
「寂しいのかな……私……いや、私は大魔導士エルマ!むしろ騒がしいのがいなくなって清々したさ!」
「これでまた一人で魔法の研究に没頭できるからよかったんだ」
そう、これでよかったんだ。
「本当にこれでよかったの、エルマ?」
「……っ!」
驚いた、急にお母さんの声が聞こえたと思ったら後ろに立ってるんだもん。
「お母さん、いつの間に来てたの?」
「今来たばかりよ。それより本当によかったの? これで」
「あぁよかったさ、これでまた魔法の研究に集中できるからね」
「……強がっちゃって、本当は切ないくせに」
「えっ?!」
「私を誰だと思っているの? 貴女の母親よ?貴女の考えていることなんてすぐに分かるわ」
「な、何のこと? そんなわけ」
やめてお母さん、それ以上言われたら堪えられなくなる。
「本当はあの子と別れたくなかったんでしょ?本当はもっと一緒にいたかったんでしょ?」
「あっ……う………。」
「本当は泣きたいんでしょ? 悲しいんでしょ?」
「うぅ………。」
やめて、せっかく堪えてたのに……目が熱くなってきて……。
「泣きたいなら泣きなさいエルマ、変なプライドなんか捨てなさい!」
「う……あぁ………。」
ピチョン……。
「うわぁああああん! レン君が行っちゃったよおぉおお!」
「えぐっ、えぐっ……寂しいよぉ………。」
「あぁエルマ……可愛そうに………こっちにおいで、抱きしめてあげるから」
「うわぁあああん、おかぁさぁん~」
「よしよし、悲しかったわね、エルマ」
「うぅううう」
「気が済むまで泣きなさい」
「ひっぐ、ひっぐ……。」
私はお母さんの優しさに甘えたいという感情とレン君との別れの寂しさでその後十分ぐらい泣き続けた。
ここは、どこかしら?
確かエルマと戦って、私はまた敗北した。
ということはここは地獄かしら?
「お母さん………。」
ん? 誰かが私を呼んでいる? 一体誰かしら?
「お母さん……お母さん!」
ああ、この声は……レイラ?
「起きて、お母さん!」
「……はっ! レイラ!」
「………ここは、もしかして元の世界かしら?」
私を呼ぶ娘の声に反応して目覚めると、そこには見慣れた光景が広がっていた。
そして不思議なことにあれだけズタボロに破壊された私の身体は元に戻っていた!
「どうやら理屈は分からないけど元の世界に戻れたのね」
「はぁ~ エルマたちに敗れたのは不服だけど仕方がない、娘の姿を見に行きましょうか」
愛娘……レイラに会うために瞬間移動の魔法を唱えようとした。
しかしその時、後ろの方から聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。
「チュウチュウ!」
「ん? あら、レイとプチじゃないの。貴方たちも無事に戻れたのね♪ よかったわ、それじゃあ私と一緒に行きますか」
「チュ~ウ♪」
二匹のハムスターを抱えて今度こそ出発するため瞬間移動の魔法を唱えた。
「ワプル!(転送せよ!)」
ブンっ!
待っててね、レイラちゃん♪
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