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★魔女と人間のトランプ勝負★
エルマとの初めてのトランプ勝負、負けられない! 負けたらどんな屈辱を味わされるか分からない。
レン君とのトランプ勝負、このカードの持ち主であり、天才魔法使いであるこの私が負けるわけない!
それに、魔女である私が負けるなんて究極の屈辱よ。絶対負けられない!
「それじゃあレン君、貴方が先行だから貴方から取りなさい」
「わかった、じゃあどれにするかな?」
さて、どれがペアになるカードかな、うまく行けば相手に大ダメージをあたえられるんだよな。
レン君の指が六の所に差し掛かっている、もしそれを取られたら確実に頭痛の効果を受ける事になる。
それはまずい、一発目からそんなのくらったらたまったもんじゃない!
「さて、じゃあこれだ!」
まずい! 六を取られたら確実に負ける! 正確には降参したくなるほど痛いから絶対降参して負ける!
「と見せかけて、これだぁああ!」
レン君の指が隣の十を取っていった。
「十か……て事はなんの効果もないか」
「ふふっ、残念だったなぁ、レン君(危ない! そのカードにしてくれて良かった)」
「次は私の番ね♪ どれにしようかな」
エルマのやつが何選ぶか……彼女の指が五に差し掛かってるな、錯乱か……微妙だがまだましか。
「じゃあこれにするわ!」
これ! と言って取ったカードは四か……四!? 四はまさか!
「電流ねぇレ~ン~く~ん♪」
「うぎゃああああああああ! おぉおおおおおお!痺れるぅうううううう!」
「さて、今度は貴方が引きなさい」
「うぐおおおおお! 行くぞおお! これだぁああ!」
なっ! レン君の選んだカードはキング、 まずい! 時間を止められる!
ゴーン!
「おぉおおお! どうやら時間が止まったようだがぁああああ! 電流が止まらない!」
クソう! 体が痺れて手に持ったカードが落ちる、だが気合だぁあああ!
せめて、このジョーカーを奴の手札に置き、そしてペナルティーカードを省く!
よし! なんとかエース、五、六、八のカードを取った! そして時間切れか……。
「あっ! やっぱり私のとこにジョーカーがあるわね、そして殆どのカードを持ってかれた!」
ん? 時間が止まっている間に何枚かペナルティーカードを取ったからてっきり連続でエルマに魔法をくらわせられると思ったけど効果無しだな……。
時間停止中で取ったカードの効果は発動しないのか。
エルマめ、そんなの聞いてないぞ! だがまぁ電流は止まったようだな。
「……。(この私が負けるなんてあってはならないのよ!)」
エルマの表情が険しくなったな、何だかんだで追い詰めてるようだ。
「さぁエルマ! 君の番だ!」
「うぐぐ、調子にのらないで! 行くわよ! 私はこのカードを引くわ!」
うおっ! すごい勢いで引き抜いていったぞ! あまりの速さに何取られたか分からなかったが、エルマが七のカードを捨てているという事はその数字か。
七ってことは状態異常付与無効化だったな。
まぁこのカードじゃ今はあまり意味無いけど。
「うううぅ!」
おぉ! エルマさん不服な顔、まぁそうだよな。
だって二を取ればもうワンペア捨てられるからな。
「じゃあ今度は俺の番だな」
さて、どれにするかな……ん? 何だ? 取ろうとするカードの位置によってエルマの表情が変わってる。
あぁそういう事か、エルマはポーカーフェイスが苦手なんだ。
てことはエルマの表情を見れば何のカードか分かるってことだ! よしっ!
ならこの位置に指を持って行くとエルマが焦ったような顔をしてるからこれだ!
よし! どうだ! ………!? 何だとっ!? これはジョーカーだ! どういう事だ!?
「…………。」
フフフフ、引っかかったなぁレン君。エルマポーカーフェイスに!
ワザと動揺したふりをする事で敵の思考力を鈍らせる、これが私流のポーカーフェイス!
そしてそんな動揺しているなか、まともなポーカーフェイスはつくれない!
「次は私の番ね! 私はこれを選ぶわ」
私はレン君の二のカードを取った! 二の効果は相手の手持ちカードにこちらと同じ数字のものがあれば奪い取れるという効果。
つまりはペアになるカードを強制的に奪い、捨てられる!
ふふ、来なさいカード!
私の言葉に従いジャックのカードが来た! これでもうワンペア捨てられる♪
そして次はレン君の番だけど、私はクイーンのカードしか持ってないから必然的にこれをレン君は取ることになり、私はあがりね♪
レン君はジョーカーでチェックメイト!
「さぁ、レン君♪ 私のカードを取りなさい♪」
「ぐぬぬぬ! 畜生!」
エルマめぇ、やたら顔に出るタイプと思ってたが、あれがポーカフェイスだとは……。
完敗だ、してやったと思ってたらしてやられていたとは。
いいだろエルマ、俺の負けだ。このエルマのカードを取って俺は負ける。
だが次は勝つぞ!
こうして俺とエルマのババ抜き勝負が終わった、エルマは言うまでもなく素晴らしいドヤ顔をキメていた!
俺は敗北者の面になっていた。
はぁ、それにしても俺はこんな小さい女の子に負けたのか~
あぁでもエルマって歳は百歳超えてんだっけ。
見た目はアレだが中身が大人ってか、いやババぁか(笑)
「レン君! さっきから人のことジロジロ見て、変なこと考えてるのか?」
「うん? いや、何でもないよ、ただ頭の中は歳相応なんだなぁと」
「殺すよ?」
「すいません」
口は災いのもと、言葉を間違えると俺の命が無くなる。
「まったく、貴方は本当に懲りない性格だな」
「それがこの俺、レンの生き様だ!」
「何が生き様よ、ただの馬鹿でしょ」
「ひっでぇ! 」
さすがエルマさん、Sに更に輪をかけたドSっぷり、顔に似合わず性格が悪い。
まぁいいか……あともう数時間後には時空の穴を通り元の世界に帰る、そうするともうエルマと話が出来無いからなぁ。
これも一つの思い出として大切にするか。
先ほどのババ抜きの後、俺は神経衰弱やジジ抜き、ポーカーをエルマに挑んだが全て敗退した。
エルマがここまで強いなんて正直思わなかったぞ。
結局俺の最後の思い出はこれか……畜生!
まぁしょうがない、ここは諦めが肝心だ。そしてそんな事を思いながら俺はトランプ勝負に夢中になっている間に出来上がってた異次元空間入り口前に現在立っていた。
「ここを通れば元の世界に戻れるんだな」
そうだ、ここを渡れば元の世界に、そしてエルマとお別れだ。
「確証はないわよ、あくまでも貴方の世界の因子と思われる物で作ったゲートだから」
でも、もしその先が本当にレン君のいた世界なら、もうお別れか……いや、何を考えているんだ私は。
それでいいじゃないか、彼が無事に戻れるならそれに越した事は無い。
「さてと、じゃあ行くか」
「そうね、それじゃあ渡りますか」
俺とエルマはゲートに入っていき、そして歩き始めた。中は少し広めの空間が広がっており、不思議と周りは明るい水色に光っていて歩くのに困らなかった。そして暫く歩いていると、先の方に景色が見えてきた。
「おぉ! 景色が見えてきた! という事はそろそろ出口か」
「そうね、そろそろ出口ね……。」
入り口に近づくたびに俺は嬉しい表情になっているのに対し、エルマの表情は悲しげになっていくように見えた。
「そろそろ出口につくわね」
「あぁ、そうだな」
俺はどんどん出口に近づいて行く。残り二メートル、一メートル、そして!
「よし! 出口だ! さぁ帰還の時間だ!」
そして俺はゲートの外の景色を見た。
よし帰ってきた! と思った…が、ある光景が目に入った瞬間俺は驚いた!
「あれ、あれれ!?」
「どうしたの、レン君?」
「エルマ、確かに俺はこの星に帰ってきた、だが違う! 俺が居た世界に……。」
俺は一息ついた、何故かって? それは目の前にいるある生物に対して驚いているからだ。
「俺の居た世界にマンモスはいねぇええええええ!」
そう、なんと目の前に何百年も前にいたというマンモスがいたのだ!
俺が居た世界とは明らかに違かった。
そんな驚いている俺に対して、エルマは状況を理解してないので目を丸くしていた。
「ん? ここは貴方のいた世界じゃないの?」
「あぁ、確かに俺の生まれた星ではあるが、何だろう…時代が違う………。」
「ふ~ん…じゃあどうするの? 戻る?」
「当たり前だぁ!」
畜生! 完全に帰れたと思ったのに! て言うかエルマに散々帰る雰囲気出してたのに帰れないって超かっこ悪いじゃないか!
しかも、よく見るとエルマの奴ニコニコしてやがる。
そりゃあそうだろうな! こんな無様を晒したんだ!
くそぉ、次から帰る雰囲気出すのはやめだ!
俺は後悔しながらしぶしぶゲートに戻っていった。
そして戻っていく道中、会話をしながら歩いていた。
「なぁエルマ、さっき俺の方見てニヤニヤしてたけど、俺の無様っぷりが面白かったのか?」
「ニヤニヤ? 私が? そんな事するわけ無いじゃん」
「い~や! 絶対笑ってる! と言うか今も笑ってるぞ!」
「そんな事ないわよ、何で私が笑うのよ!」
何でって、そんなの俺が聞きたいよ! と出かかった言葉を呑み込んだ。
もしかしたらエルマの奴、本当に無意識で笑ってるかもしれないから。
だが俺の言う事が嘘と思われるのもしゃくだから別の方法で思い知らせてやることにした。
「なぁエルマ、こっちを向いてくれ」
「なに? あっ!」
エルマは俺の作戦に引っ掛かった! 俺は今手鏡を持っていて、それをエルマに見てもらった。
エルマは鏡に写った自分の笑顔を見て驚いた。
この私が……笑ってる?! 何で? レン君が帰らなくなったから喜んでるの?
このエルマが? 何でよ!
「どうしたエルマ? ついに認める気になったか?」
「うるさい! これは…そう! レン君が自信満々に帰れる雰囲気出してたのに失敗したから笑ってるだけよ!」
「ひっでぇ! て言うかそれ言うなよぉ~ 恥ずかしんだから」
「ふふ、どうよ? どうよ? 失敗した気分は?」
「うぐぐぐ………。」
くそう! 俺がエルマを辱めてやろうとしたのに、俺が辱められてる! 次は負けねぇからな!
俺はそう胸に秘めて空間を抜けた。
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