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★性格が反転した魔女様★
俺たちは全速力で走りエルマの家にたどり着いた。
だがなかなか家に入る勇気が湧かない。
そんな俺を気遣ってなのか、レイちゃんは手を握ってくれた。
そして微笑むような顔をして俺に勇気づける言葉をかけてくれた。
「大丈夫ですよ、レンさん。私も一緒ですから」
「あぁ、ありがとう」
俺は勇気をもらいエルマの家の扉を開いて中に入った。
そして部屋の中央に向かって行くとエルマがこっちを睨んで仁王立ちをしていた。いやこえぇよ!
物凄くお怒りオーラ出てるよ! やべぇいったい俺が何をしたと?
まぁここまで来たんだ、本人に聞いてみるか。
「あぁ~ エルマさん、ただいま戻りました~」
「えぇお帰り、随分楽しそうにしてたじゃない」
あらら~ もう喋り方が怒り口調だぞこれは。
だが一応聞いてみるか?
「え~とエルマさん、何か怒ってない?」
「ふん! 別に怒ってないわよ!」
「いやいやどう考えても怒ってるだろ! 何を怒ってるんだ?」
「うっさい! バカっ! もうほっといて!」
「ほっとけるか! 何怒っているのか気になるだろ」
「うるさいなぁ! 何で気になるのよ!」
「そりゃあ人に怒られてたら気になるのが普通だろ?」
「別に気にしなければいいだけじゃない」
「ムリムリ、気になってしょうがない。だってエルマが怒るなんてよっぽどのこと……でもないか」
そうだよ、前にも俺エルマを怒らせたわ。
あの時は何でだっけ………あぁ! そうだよ! 思い出した。
あの時はエルマのプライドを傷つけて怒らせたんだ!
ん? でもまてよ、今回は何で怒ってるんだ?
俺はレイちゃんと楽しく遊んでいただけ……遊んでいただけ………。
あぁ~ 成る程ぉ~ わかった、何でエルマが怒ってるか。
そうかそうか、エルマも意外と可愛いとこあるじゃん。
まぁただこれであっているかは分からないから聞いてみるか。
「なぁエルマ、俺とレイちゃんが遊んでいるところをお前が見ていたとレイちゃんから聞いたのだが、もしかして仲間外れにされたことを怒ってる?」
「………っ! そ、そんなわけねぇだろバカっ!」
「その口調、エルマが興奮したときや気持ちが高ぶるときに出る口調だ、図星だな…エルマ」
「図星じゃない! 勘違いするなバカっ!」
「エルマ、俺はお前を放置したつもりはなかったが、
そんな思いをさせていたとは……今回は俺が悪かったな」
「だからそんなんじゃないって、私は寂しい思いなんてしてない!悲しかったり、嫉妬なんかしてない!」
なるほど、見事に自白してくれてるな。興奮して秘めてた思いをぶちまけてくれるのは良いが、なぜ嫉妬なんかしてんだ?
まぁ確かに、エルマ友達いなさそうだから仲良くしている俺たちを見て嫉妬したのかもしれないな。
「わかったエルマ、散々自白してくれたからお前の気持ちは充分に分かったよ。寂しい思いをさせてごめんな」
「ちがうって……違うって言ってるのにっ!」
自分のプライドを守るためなのか、エルマは悔しそうな表情を浮かべながら自分の部屋に入っていってしまった。
「あっ! おい待てよ! エルマ!」
俺はまだ話が終わってないと思いエルマの部屋に入ろうとした、だがそれをレイちゃんが止めた。
「レンさん、今はそっとしておきましょう。エルマさんにも心の整理をする時間が必要だと思いますので」
「あぁ、分かったよ」
そうだな、解決を急ぐとかえって良くないことになりそうだしな。
それにしても……乙女心というのは複雑なんだな。
さてこれからどうするか、時間潰しに今後の事でも考えておくか。
そして、この状況を時間が解決してくれることを祈ろう。
はぁ~ 私のバカバカ、何でもっと素直になれないのよ!
せっかくレン君が何で怒ってるのか当ててくれたのに。
私はプライドを守ることを大事にしてしまい仲直りチャンスを逃してしまった。
あぁあああ! 絶対に変な人、あるいは勝手なやつと思われてる!
うぅ、どうすればいいのよ。どうすれば仲直りできるのよ。
…………そうよ! いいこと思い付いた♪ 私自身に精神の反転魔法をかければいいのよ! そうと決まればさっそく。
「アベルレイ(反転せよ)」
この魔法は心ーつまり考え方を反転する魔法。記憶は残ったままで性格が反転するから特に支障はないけど、欠点があるとすれば人格も変わることになることね。
でもこれで素直になれるなら、仲直りできるなら!
「……………………。」
「………………………………。」
「………………………!?」
「かはっ! はぁ…はぁ………。」
「私は……彼に謝らなければ、素直にならなくては」
反転魔法をかけた影響なのか、今すぐに彼に会って謝りたい。
早くいかないと、彼に……レンさんに会わないと。
私はいきよいよくベットを飛び出し自分の部屋を出た。
そして、驚いたような顔をしている彼に謝罪の言葉をのべた。
「レンさん、レイさん、私の身勝手で振り回してごめんなさい!」
謝罪を受けた二人は口をポカーンとしていた。きっとまだ謝罪が足りないのね。
それはそうよね。私は嫉妬して怒ったし、更にはその気持ちを抱いたことを隠すためにレンさんを怒鳴り上げたのだから。ならば……。
「私は貴方達が仲良く遊んでいることに嫉妬した、そして孤独で寂しかった……。だから怒ってしまったけど、それは私の身勝手だった…本当にごめんなさい」
私はそう言いながら地面に座り土下座した。
正直許されるなら頭を踏みつけられてもいいと思ったからだ。
だけど、レンさんは私を踏まなかった。それどころか土下座なんてしなくていいと私を立ち上がらせて心配してくれた。少しうれしいと思った。
それにレンさんは私のことを許してくれたし、俺も悪かったとまた謝ってくれた。
嬉しい、すごく嬉しい♪ 仲直りもできて今はとっても幸せ。
でも何かしら? 何か大切なものを失った気がするのは。
とても大切な何か……譲れない何かを失った気がする……。
本当に何だったかしら?
エルマの奴が部屋にこもり数十分後、エルマが部屋から出てきて行き成り謝ってきた。それも人が変わったような口調と態度で。
おかしいと思わないか? たった数十分部屋にこもってて行き成り出てきたと思ったら急に性格が変わってるんだぞ!
エルマってもしかして二重人格なのか? それならどっちが本当のエルマだ?
というかこの先ずっとあんな態度をしたエルマと過ごすのか?!
嫌だぞ俺、調子が狂う……。なんというか俺の中のエルマのイメージは意地っ張りでプライドが高い魔女! そんなイメージで一緒にいたから今のおしとやかエルマは逆にきみが悪い。
何で変わったのかは本当に謎だが、早いとこ元の性格に戻ってほしいものだ、というか元の性格に戻す!
だがその為にはまず何でこんな風に変わったのか知る必要があるな。
本人に聞いてみるのが一番手っ取り早いが、まずはレイちゃんにも聞いてみるか。
彼女は歳のわりに頭が切れるからな。
だがそんなレイちゃんは何処に行ったんだろう?
エルマさんの謝罪を受けた後、私は二匹のハムスターと一緒に外に出かけた。
色んなものの観察という理由もあるが、一番は頭の中の整理をするためよ。
そしてここでなら元の年齢に戻ってもあの二人にはばれないでしょうね。
「タイム・オブ・リターン(時よ戻れ)」
ふぅ~ これで小さい子供の体から大人の体に戻ったわ。
そして戻った影響で知能数も変わったから何でエルマの性格が変わったのか理解した。
「彼女はどうやら反転魔法を使ったようね、そうすることで素直じゃない性格が素直になり謝れるようになる、といったところかしらね」
「でもこの方法はある意味別の人格を生み出すということになるから早く解除しないとどんどん意識が上書きされてきて元の性格に戻れなくなるわね」
「はぁ~ まったく厄介ごとに巻き込まれたわ、早いとこ解決してこの未知なる世界を調査しないと」
「もしかしたらこの世界にあるかもしれないから。私の娘たちを敵から守る力―時魔法を強化する力がね」
さて、少し喋りすぎたわね。早いとこ少女の姿に戻り、問題を解決しにレンとエルマの元に戻りますか。
「タイム・オブ・バック(時よ逆行せよ)」
体がどんどん縮んでいく、頭もぼ~としてくる。
そして気が付くと少女の姿に戻っていた。
「さて、道が見えてきたから早くレンさんとエルマさんのところに戻ろう」
私は二匹のハムスターを持ってエルマさんの家に戻って行った。
レイちゃん何処に行ったと言ってから数十分後、外へとつながる扉が開き本人が戻ってきた。
だが何だろう、見ためは一緒だが何か変わったようにも見える。
こう雰囲気が少し大人になりかけてるみたいな?
何だか分からないが、ただの純粋無垢な少女がミステリアスな女性になったみたいに見える、みたいな?
自分自身が何言ってるのか分からなくなってきたがとにかくそんな感じなのだ。
だが多分気のせいだろう、とりあえずレイちゃんにもエルマが変わったのが何でか聞いてみるか。
「お帰りレイちゃん、外は楽しかった?」
「うん! 色々見れたし考えることもできた」
「そうか、そういえばエルマが突然あんな風になった理由とかってわかったりするかなぁ?」
「はっきりとは分かりませんが、多分自分自身に反転魔法をかけたと思われます」
「反転魔法? なにそれ?」
「反転魔法とは言葉通りかけられた者の性格を真逆にしてしまう魔法です」
「そうなんだ、確かにそれならあんな風に変わるのも納得だな」
「それともう一つあるんですが、この魔法はデメリットとして性格が反転することで元の性格が違う性格に上書きされていきます」
「上書きって……上書きされるとどうなるんだ?」
「元々のエルマさんの人格が消え、新しいエルマさんの人格が生まれます」
「結果的に別人になるということです。しかも知識や考え方も変わっていきますから元に戻る魔法も忘れてしまうかもしれないです」
「えぇええええええっ! やばいじゃんっ! 早いとこエルマの部屋に行って元に戻すぞぉおおお!」
「……………。(そうね…早く解決しないとね)」
現在、俺とレイちゃんはエルマの部屋の扉の前に来ていた。
「それじゃあ、ノックをしてみるぞ」
「はい、レンさん」
コンコンっとノックを鳴らした。すると中からエルマの声が聞こえてきた。
「はい、どうぞ」
俺は入る許可を得たのでドアノブに手をかけた。
それにしても、エルマの奴もう人格が変わってるよ・・・・・・。
だって、エルマのしゃべり方っていつもはクール感が少し混ざったような話し方と声色をしているのに、今のエルマは明るい女の子が喋るような声色で話すんだもん。
正直不気味さと不安が募る。こうなった責任も少し感じてるし。
だがどちらにせよエルマと話をしてみて元に戻れるかの判断をしなくては!
ガチャリっ! ドアノブを回していざオープン!
「……………。」
「……………………っ!?」
「エ、エルマ? だよな?」
「そうだよ、レンさん♪ 私はエルマですよ」
あぁああああ~ エルマさん完全に反転人格になってしまってる!
髪型も後ろで一本縛りしてるし! 雰囲気も女の子らしい!
えっ? これ元に戻るの? 戻せるの!? もうだめじゃねぇ?
何てことだ、俺がエルマを追い詰めてこんな風にしてしまった!
「エルマ、ごめんな。俺がお前を追い詰めてしまったせいで……。
自分自身に反転魔法をかけたんだろ? だから性格が変わったんだろ?」
「大丈夫ですよ、レンさん♪ 確かに反転魔法を自分自身にかけてレンさんに謝りに行きましたが、でもそれは私自
身の意思でやったことですから気にしなくていいですよ」
何だよこのエルマの態度、マジ天使みたいで俺罪悪感が大きくなったよ。
「なぁエルマ、俺としては元のエルマに戻ってほしいと思うんだけど。勿論今のエルマが嫌いというわけではないけど、でも出来れば元のエルマの方が」
「レンさんは優しんですね、でもごめんなさい……実は性格を反転させた結果元に戻る魔法を忘れてしまったの」
「えっ!? それじゃあエルマは元のエルマに戻れないの?」
「そうですね、でも私はこれで構いません」
「エルマ……ごめん、俺のせいで」
「レンさん、そんなに落ち込まないでください」
「だけど………。」
「私はね、魔法を使い素直な性格になれたからとてもいい気分よ♪元々のプライドが高い性格は自分でも嫌気がさしてたしね」
「そうか…………。」
「でも、でもね」
「ん?」
「レンさんが元の私のことも好きなら、私を元の性格に戻してくれてもいいよ」
「エルマ…わかった、頑張るよ!」
「ふふ、期待して待ってますね♪」
「ああ! 期待して待っててくれ!」
俺は元に戻せる方法を考えるためエルマの部屋を出て行き本を読みあさり始めた!
すると近くにいたレイちゃんがぼそりと何かを言ってきた。
「あの状態ではもう戻せない、どうしても戻したいならその者の時を戻せ」
「ん? レイちゃん今何か言った?」
「へ? いえ、私は何も言ってないですが?」
「あれ? じゃあ今のは誰の声だろう。もしかして幻聴か?」
俺は何の声だったのか不思議に思いながら本を読み続けた、もしかしたら元に戻す方法が載ってるかもしれないからな。
「…………。(レン、やはり貴方は人の思考を少しよめてるわね)」
「……………。(私が内心で放った言葉をちゃんと聞く事が出来てる)」
「……。(パッとしない少年と思ってたけど、なに結構興味深い人じゃない)」
「………。(もっと観察してみますか、幸い私のことを年相応の女の子と思ってるようですしね)」
「…………。(せいぜい頑張りなさい)」
おわっ! 何だ、今またレイちゃんから変な感じがした気がする。
何だか上から目線でものを言われた気がする。
………まぁ気にしなくっていいか。
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