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「ふーー」
どうにかアパートまでたどり着いた。ズルズル歩くサラリーマン君を玄関へ座らせて靴を脱がせる。 自分の靴を脱いで顔を上げると、サラリーマン君はもうキッチンの床で横になろうとしてる。
「ちょっと待って。部屋まで行こう!」
サラリーマン君の後ろに周り、背中を起こし脇に手を入れる。ズルズルとフローリングを引っ張って、リビングの中へどうにか引き入れた。 手を離すとその場でへたり込み、べしゃんと女の子座りしたかと思ったら上半身がボテッと前へ倒れる。サラリーマン君の頬は、絨毯にすっかりくっついてしまった。
この体勢で寝る気なのか。 起きる気配無し……だよねぇ。 とりあえず、冷え切った部屋をなんとかしなきゃ。
石油ファンヒーターを点火してエアコンも点け、風呂の給湯スイッチも押す。ゴォォと勢いよく吹き出す温風が部屋を暖めてる間にコートを脱ぎ、スーツからスウェットへ着替えた。ピクリとも動かないサラリーマン君を見つめる。
「やれやれ……」
こうなったら泊めてやるしかないか……。目を覚ましたら帰ってもらおうと思ったけど。絶対起きない気がするし。
俺は腹を括って、サラリーマン君の身体を起こした。ずり落ちそうなメガネを外してコタツの上に置く。それからダボッとしたコートを脱がす。 想像通り、頼りなく華奢な体が現れた。スーツは今時の細身タイプだから余計だ。
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