第一章

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 ほっそいなぁ。まぁ、だからおんぶできたんだけど。  ゆるゆるのネクタイを首から抜いて、スーツの袖を引っ張って腕を抜く。上着をハンガーへ掛けベルトを外し、スラックスも脱がせて、同じハンガーへ掛けた。  シャツは……いっか。あ、でも下にTシャツ着てるな。  ポチポチとワイシャツのボタンを外し、Tシャツとパンツ一丁の格好にすると、細さが更に際立った。  身ぐるみ剥がされたサラリーマン君はブルッと震わせ、体をもそもそ縮め丸くなっていく。  あ、寒いよね。 「……うーん」  どうしよう。客用の布団なんてないし、ベッドも俺のしかない。エアコンつけっぱなしは電気代がかさむ。 「あ、そっか!」  俺はサラリーマン君の身体を起こして、話し掛けた。 「ベッド、入ろうか? 寒いでしょ?」 「……うん」  意識なさそうだけど、反応が返ってきた。  サラリーマン君の腕をまた首に回して、隣のベッドのある部屋までヨロヨロと歩く。ベッドに到着して、サラリーマン君を座らせた。サラリーマン君は座った途端コテンと横に体を倒した。  あ、靴下履いたまんまだった。  靴下を脱がせて、布団と毛布を掛けると、サラリーマン君はもそもそとその中に埋まるように潜っていった。しばらくそれを眺めていたけど、お風呂が沸いた合図が聞こえてきたから、風呂へ入る事にした。自分の着てたのも、サラリーマン君の靴下と脱いだワイシャツも一緒に洗濯機へ放り込んで洗濯しちゃう。  俺だったらヤだもんな。一日履いて脱いだ靴下、次の日にまた履くの。
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