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サラリーマン君は俺の肩の辺りでうつらうつら頭を揺らしてたけど、とうとう限界が来たのか、頭をコツンと俺の肩に乗せるとそこで動かなくなってしまった。頬にふわふわ当たる髪の毛。口をむにゃむにゃ動かし、居心地のいい場所を求めてなのか、頭をスリスリとしてくる。
なんか、頑張ってたし……おっさんじゃないし、どっちかっていうと、可愛い感じだし。まいっか。男だけど。さっきまでは男に肩を貸すなんて絶対嫌だったけど、ちょっと可哀想になっちゃったよ。
ふわりとアルコールの匂い。
よっぽど飲んだのかな。疲れてるだけじゃこんなにユラユラしないか? サラリーマンって大変だよね。疲れてる時はお互い様。俺の肩でよければ貸してあげるよ。
なんて思っていたら次の駅名がアナウンスされた。
あ、俺の降りる駅だ。
サラリーマン君の観察をしていたら知らない間に時間が経っていたらしい。同じ車両にはもう二、三人しか乗客がいない。
サラリーマン君は……終点で降りるのかな? 初めて見た顔だけど。
なんて思っているうちに降りる駅へ到着だ。電車が徐行運転になる。俺がサラリーマン君に声をかけようとしたその時だった。サラリーマン君が急に立ち上がった。
「え」
ビックリして見上げると、サラリーマン君は口元に手をバッと当て、つんのめるように駆け出し、ドアにへばりついた。顔がみるみる青くなっていく。ドアにべっとり寄りかかって、ぎゅーっと目を閉じる顔は相当キツそうに見えた。
うわぁ……これは、まさか? やばいかも?
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