第一章

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 俺はハラハラしながらサラリーマン君を見ていた。  早くドア開かないかな。  ジリジリしているとやっと電車が停止する。  プシュー。  開いた瞬間に飛び出るサラリーマン君。その肩からカバンがストンと落ちた。サラリーマン君の足にひっかかるカバンのベルト。気づいてないのかそれどころじゃないのか、足を上げた瞬間、サラリーマン君はホームで見事にこけてしまった。 「あちゃ」  ベンチに手を突きぐらぐらのヨレヨレになりながらも起き上がり走ろうとして、またカバンのベルトに引っかかる。四つん這いになったその瞬間、サラリーマン君はそこで勢いよく噴射した。 「うわわわ」  俺は電車から降りて、キョロキョロと辺りを見回した。  駅員さんに知らせた方がいいかな。  降車した他の客は、サラリーマン君を汚いものでも見るような目で見ながら、そそくさと階段を上がっていく。 「はぁはぁ」  白い息を上げとっても苦しそう。そして嗚咽と共に大量の二発目。 「あひゃ」  サラリーマン君は全部吐ききって、ゴロンと体を開くとベンチに腕を伸ばしてグッタリと寄りかかった。 「だ、大丈夫? 駅員さん呼んでこようか?」  俺は目を閉じてグッタリしているサラリーマン君に話しかけた。でも応答無し。
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