第一章

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 サラリーマン君の体重を一身に受ける。顔を覗き込めば相変わらずグッタリしたまま。閑散としたホームにビューッと肌を切るような冷たい風が吹き抜けた。  ううっ! 寒いっ!  反対側ではもうひとりの駅員もやってきてなにやら騒いでる。あっちが優先なのは分かるけど寒すぎる。サラリーマン君を捨てて帰るのも人でなしみたいで嫌だ。 「あー、もう!」  ボヤきつつ、全身で寄りかかってくるサラリーマン君の腰に手を回し歩き出した。  大量に吐いたけど、大丈夫かな。意識戻らないのなら救急車呼んだ方がいいかも。  考えながら、フラフラ右へ左へ揺れる身体を支え階段をどうにか昇りきって、今度は下りの階段を……。  無理だし、二人で転げ落ちそうだ。 「よっ!」  俺はサラリーマン君をおんぶして、階段を降りた。肩にずっしりかかる二つのカバンと意識のないサラリーマン君。  お、重い……。  なんとか階段を降りて、改札の前まで来た。背中のサラリーマン君をズルズルと地面に下ろす。 サラリーマン君の足は崩れることなく、なんとか地面で踏ん張った。
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