ハルの楽しみから別れへのターニングポイント

2/2
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「だって、フユが平気そうな顔で笑っているから!」  私の中では怒り顔で訴えたのに変わらずフユは口元だけを緩めた。フユが無表情で淡白で感情が乏しいのは昔からだけど、もっと怒ってくれたっていいじゃん、もっと感情を見せてくれてもいいじゃん。私ばっかりやりたいことやって、これからやりたいこと頭の中に並べて、呑気にホットドッグ食べてーー。 「バカみたい!」 「……えっ……なんてハル?」  ポケットから手が出て何か言いたげに恐る恐る伸ばされた。フユのくせにかじかんで真っ赤になった手。 「バカみたいって言ったの! いつもいっつも私ばっかりじゃん! 気候の変化でだんだん『移行期間』は短くなってるのにさ!!」 「す、すみません」  伸ばされた手は驚いたように途中で止まってしまった。あーもう、そんなに怒っているわけじゃなくて。こんな時間ももったいないのに。 「なんで謝るの!? フユは何も悪いことしてないじゃん!」  どうして口から出てくるのは、意地悪な言葉ばかりなの? 「すみません」  謝らなくていいと言ってるのにまた謝ってしまうフユ。沈黙が続き、私の口から思わずため息が出てしまった。  それが気に障ったのかなんなのかはわからないけど、フユはついにネクタイをキュッと締めてゴーグルまで掛けてしまう。あ~また心閉ざしちゃって!  仕方がない。こうなったら久しぶりにあれを!  ホットドッグの袋を丸めると、手を払って天と地に向けて両腕を伸ばす。目を閉じて感じるままに通り過ぎる風をがっとつかむと、春の匂いが充満してきた。 「スプリング・フル・ブルーム(春爛漫)!!」  鼻の奥をつくようなつーんと冷たい風は穏やかな陽気に変わり、赤茶色のレンガのクロスロードからは色とりどりの草花が顔を出してきた。  ゴーグルの奥にある瞳があのときのようにキラキラと輝く。細い脚にツルを絡ませ、そのまま目の前にまで移動させた。  慌てるフユの顔からゴーグルを取り上げる。 「それで、残りの時間どうやって楽しませてくれるの?」 「すみませんーー」 「だから、謝るのは禁止!!」  目の前にあるキレイなブルーの瞳が左右に揺れた。 「ーーいえ、そうではなくて。僕は、ハルと過ごせるだけで楽しいんです」  パッと花が咲いた。私の力では咲かない花が。 「散歩の続きしましょう」  ひんやりとした手が私の手をぎゅっとつかんでくれた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!