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「ごめんね、どうしても渡したいの」
「れんげ、」
私はそう言って瑞穂くんの手を自分のスカートから離した。自分の席に向かい脇にかけてある白色の紙袋を手にする。
けれど、再び瑞穂くんの席の前に戻り先ほど戻した椅子を引き出し、そこに腰を下ろした。
突っ伏していた瑞穂くんが顔を上げて驚いた表情をしこちらを見ているから、私は彼の目の前に白色の紙袋を差し出す。
「先輩のところには、行かないよ」
「……」
「あのね、手作りだから美味しいかどうか分からないけど」
「俺に?」
「うん」
瑞穂くんの手によって紙袋の中から小さな箱が取り出される。目の前で本人に見られるのはなかなかに恥ずかしいなと思いつつ彼の反応を伺った。
「あのね、先輩たちに渡すチョコは友達と一緒に買いに行ったお世話になりましたの気持ちで渡す義理チョコでね」
「……うん」
「私が用意した本命チョコレートはこれだけなんだけど」
するりとリボンを解いて、ラッピングを剥がした箱の中を見つめながら瑞穂くんがにこりと笑ったのが分かった。
中にはホワイトチョコレートで作ったトリュフチョコレートと生チョコレート。
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