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今、世界は緩やかに崩壊へと向かっている。
その原因は今、目の前にいる彼女だった。
元々魔王の娘であった彼女は、自らの父に生け贄として利用された。
「勇者の力を試してやろう」
そう言って、彼女の胸に剣を刺して魔王は去っていった。
そんな彼女の胸に刺さっているのは、呪いの剣。
その剣を引き抜かなければ世界が終わるという伝説の呪いの剣だった。
引き抜けば代わりに彼女は消える。
そして、その剣は勇者である俺にしか抜けないらしい。
俺はそんな伝説の剣を抜くために遥々ここまで旅をしてきた。
時に命懸けの戦いをしながらも数々の困難を乗り越え、ここへやってきた。
呪いを解いて世界を救ってみせる、という決意を胸に抱いて。
しかし、彼女の前に立ったその瞬間にその決意は崩れ去った。
古びた協会で十字架に縛られていた彼女は──とても美しかった。
透けるほど真っ白な肌に、長くて美しい金髪。
銀色に輝く綺麗な瞳に、真っ赤な唇。
その姿はまるで、月の女神のようだった。
「よくいらっしゃいましたね。勇者様」
彼女は俺を見た瞬間に、俺が何者なのか見破った。
それに対する驚きよりも先に、彼女の鈴のような凛とした声に俺は息を飲んだ。
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