何事も。

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何事も。

「あ、りんりん。久しぶり?、一昨日ぶりだけど」  教室に入って来たりんねに手を振るるみさん。どうしてまた彼女はここにいるのか。しかも朝から。前までは昼休みくらいしか来なかったのに。  りんねを見たのは一昨日ぶり。体調が悪い様子はなくて、るみさんに笑顔でチョップしている。やっぱりサボりだったんだろうか。悪い予感が的中しなかったことにほっとする。 「何、そんなに見て」  りんねと目があった。無意識に見つめてしまっていたようだった。 「な、なんでもない。ごめん」 「ふーん」  興味はないとでも言うように、彼女はすぐにるみさんとの会話に戻った。会話の内容はよく聞こえない。けれど、休んだ理由に関して話している様子はなかった。るみさんが楽しそうに笑っているから、お互いの面白い話の情報交換でもしているのかもしれない。  今朝は別々の登校だ。  基本的にりんねと来るときは彼女がすでにぼくの家の玄関の前か、もしくはマンションのロビーで待ち伏せしているとき。今日は見かけなかったから、また休みなのかと思って一人で登校した。  ひとりは楽だ。歩いてゆっくり学校に行けるから。朝から体力を使い果たす心配がない。  ぼくが学校に来るのはそこそこ遅い。だから後から来たりんねはもっと遅いことになる。つまりもう時間はない。 「るみさ・・・」 「ほらチャイムなるぞー、席につけ。ん、そこのお前。ここのクラスじゃないだろう」 「げ。」  教室に戻ったほうがいいよ、と言おうとした矢先に先生登場。なんと不運な。今日は職員会議が大分早く終わったらしい。 「じゃーねー」  るみさんは嫌そうな顔をしてそそくさと出て行った。  おとなしく言うことを聞く人にうるさく言い続ける担任じゃなかったことが救いだとも言える。 「あーあ、馬鹿だなぁ」  走って行く後ろ姿を見ながらりんねが呟いた。微かに口角が上がっている。やっぱり二人は仲がいい。
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