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「りんねが話せばいいだろ。サボりの理由とか。機嫌が悪い理由とか」
ぼくは苛立っている。
最近わかったことだけど、りんねの苛々はぼくに伝染するらしい。
彼女が楽しんでぼくをいじめているときは、ぼくの気分はただただ悪くなる一方で、どんどん弱気になる。でも、彼女が苛々してぼくに八つ当たりをするとき。その一瞬、ぼくはりんねに強気になる。
ストレス発散くらいの勢いはある、らしい。その場面を見ていたりゅうへいに聞いたことだから定かではないけど。こういうことは、客観的に見た方がわかりやすいのだろう。
「なんでサボったって決めつけてるの」
りんねがぼくを睨んだ。「サボり」という単語が気に食わなかったらしい。こういうところを譲らないから面倒くさい。どうせこっちが証拠を突き付けたって納得しないくせに。
「ぼくが昨日プリントを置きにりんねの家に行ったとき、誰もいなかったからだよ。具合が悪いなら家にいるはずだよね」
結局、二度訪問しても反応はなかったのでプリントはポストに入れた。誰かしら見るだろうと思ったからだ。
案の定、というか、ぼくの勘は当たり、昨日のプリントに書いてあった課題をりんねはしっかりと提出できていた。ぼくに感謝こそすれどどキレられる必要はないはずだ。
「機嫌悪くないけど?」
彼女はそっぽを向いた。誤魔化した。あからさますぎる、誰もがそう思うだろう。
「ならそれでいいんじゃないの」
ぼくは今機嫌が悪い。だからいちいち彼女の言い分なんか聞いてやらない。彼女の機嫌をとっている余裕なんてない。自分の機嫌くらい自分でとってほしい。
「機嫌悪いのはあんたでしょ」
そうきたか。
彼女の自分のことを棚にあげる癖は出会った時から今まで健在だ。
ぼくは彼女の横暴さに慣れている。こういうときは絶対に折れてやらない。負けた瞬間、りんねは自分が上だと確信しさらに強く言いくるめようとするからだ。
「どうしてそう思うの」
「そのまんまよ。当たり強いし、目つき悪いし」
りんねは怖いんだろうか、今の状態のぼくが。怯えているような表情を見せられると強く出られなくなる。いつも強気な彼女だからなおさら。
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