ぼくは君の。

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「おかえり、ぼくの鞄・・・」  教室に着くと机の横に鞄がかかっていて、先に着いていたりんねは友達と話していた。特に謝罪はないらしい。なれたものだと思う。 「はよ」 「おはよー」  目をこすりながら目の前を通り過ぎていった幼馴染のりゅうへい。彼が所属しているサッカー部には朝練があって、そのためだけに学校に来ているのではないかと思うほどに、後はずっと寝ている。 「今日は早いな」 「うん・・・りんねがね」 「あぁ」  なんとなく察したらしい。  いつもなら、りゅうへいが机にうつ伏せになっているところにぼくが声をかける。朝の教室にすでにいる光景は珍しいのだろうと思う。ぼくはいつも時間ギリギリにくる派で、本来ならば、15分前に席についてることはありえない。  そーかそーか、と頷きながら、自然な流れで机にうつ伏せになった彼はすぐに就寝モードに入った。その姿を見ているとぼくまでだんだん眠くなってきて、睡魔と戦って机に頭を強打する前に、自分からうつ伏せになった。  頭に痛みを感じて起きた時には、朝礼が終わって先生が教室から姿を消していた。 「いつまで寝てんのよ」  頭痛の原因はりんねのチョップだったらしい。彼女はぼくを見下ろすように仁王立ちをして、チョップしたての手を誇らしげに掲げていた。 「寝起きにそれは目覚めが悪いよ」 「寝てるのが悪い」 「そんなバカな・・・」  その理由に絶句しつつ時間を確認する。まずい、次の授業まで1分しかない。  未だにチョップの余韻に浸るりんねを無視して、教科書を取りに教室後方のロッカーに向かう。  ついでにりんねの机を見るとすでに授業の用意が済ませてあった。  さすが。抜かりないな。  急いで席に戻ると、相変わらずりんねはぼくの席の前に立っていた。彼女にはいつも余裕がある。悪く言えばマイペースすぎる。  何も言わずに席について、机の上に教科書とノートを用意する。定位置に置いたところでりんねが口を開いた。 「疲れることでもあった?」  ぼくは呆気にとられた。彼女が自分が朝ぼくにはたらいた悪行を忘れていることよりも、彼女がぼくの心配をしていることに。熱でもあるのだろうか。額に手を当てようとし、て振り払われることに恐怖を抱きやめた。
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