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逃げようとは思うもの、のできない状況。それが今。
今日は朝から用事があって早めに家を出た。だから登校は一緒にならなかったけれど、放課後は何も用事がなく、真っ直ぐ帰らざるをえない。彼女の後ろをとぼとぼと。
なんという不運。
「今日避けてるよね?」
りんねはぼくの顔を何度も覗き込む。その度にぼくが距離を取る。そしてまたりんねが詰め寄る。この繰り返しで、もうぼくは道路脇の溝に落ちそうです。
誰か救世主はいらっしゃいませんか・・・。
「別に避けてないよ。話そうとしてないだけで」
「それが避けてるって言うんじゃないですかー?」
今の彼女には何も言っても言い訳にしか聞こえないらしい。
まるで先日までのぼくだ。
「ねえ、今からって暇?」
りんねが詰め寄るのをやめて、ぼくから少し離れた。いきなり真面目になったからその温度差に戸惑った。いや、離れてくれたのはありがたいけど。
昨日の今日だ。ある程度の気分の上下は予想済みではあったけれど、予想を超えていった。
「予定は特にないけど・・・」
何かされるんじゃないかと怯える。言葉を濁した理由はそこだ。内容によっては適当に言い訳して逃げれるように。まぁ今日の彼女には言い訳が通じないとさっき思い知らされたばかりだけど。
りんねは立ち止まって何かを考えていた。彼女の中で心境の変化があったのだろうか。どうやら真面目な話らしい。それならぼくも真剣に対応しなければいけない。
立ち止まったままの彼女を振り返る。決心したのか覚悟を決めたような目でぼくを見つめ返した。
つられてぼくも緊張し、彼女の言動に気を張る。
「ついてきてほしいところがある」
彼女の手は震えていた。
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