ぼくは君の。

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「__りんねさんの到着だい!!・・・あれ」  いるはずの人が見当たらない時はとても不安になる。特に危機感のない彼の場合は。  しばらく廊下を進むと、入り口からはちょうど見えなかったソファに、目的の彼が横になっていた。寝息を立てて眠っている。  いきなり大きな声を出して起こすのも面白い。彼はこちらが予想もつかないほどに大きいリアクションをしてくれる。  上からのぞくと、ひたいに汗が滲んでいるのがわかった。走ったのが相当こたえたのだろう。今は夏だ。暑いのもあるとは思う、と自分に言い訳をする。  窓を開ける。カーテンはそのままにして、ベランダに出る。景色がいい。この街は。  大きな声で驚かして起こす案は次の機会にとっておくことにした。今日は彼の日だ。少しくらい休ませてあげてもいい。  ポケットに入れた袋を、そこから出さずに握りしめる。  どんな反応をしてくれるだろうか。  いいことを思いついた。ただ渡すのでは面白みがない。驚かすのもまた一興ってやつかな。  鼻歌を歌いながら彼の部屋を目指す。  さて、どこにしようかな。  今日見つけなくたっていい。ただ、私を思い出してくれれば。
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