唐突だ。

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 次の朝、ぎりぎりの時間に学校に行くと、靴箱前にりゅうへいが座り込んでいた。  彼は男子の平均身長より余裕で大きく、朝に関しては特に眠いからか目つきも悪くなるので、座っていても謎の迫力があった。 「おはようりゅうへい・・・どうしたの?」  とりあえず彼の座っている位置に靴箱がある人に被害が出る前に、なんとか彼をそこから動かそうと尽力する。  が、すでに被害は出ていた。ちらりとだけど、影からりゅうへいを怯えた目で見つめる人を発見してしまった。きっとりゅうへいに靴箱を占領されているのだろう。見てしまったが最後、ぼくには見て見ぬ振りができない。  半分寝ていた彼は少ししてぼくに気が付いた。 「・・・はよ。待ってた」 「え?ぼく?」  皆さんすいませんでした。原因はぼくでした。  朝の練習が終わってからだとすれば大分待たせてしまったな、と申し訳なくなる。 「これ」  りゅうへいは雑に鞄から何かを取り出した。綺麗にラッピングされている。 「誕生日の。昨日渡せなかった」  毎年くれる誕生日プレゼント。今年も覚えててくれたんだな、と思うと嬉しくなり、口角が緩む。 「ありがと」  笑顔が溢れてプレゼントを握ると、りゅうへいが照れ臭そうにそっぽを向いた。怖い見た目でも可愛いところがある。そういうところに気づいた奴がりゅうへいと仲良くなるんだと思う。だからか、りゅうへいの友達はぼくにも優しく接してくれる。大体は見た目が怖い人たちだけれど。  自分が一番誕生日を忘れていたことや、母からのプレゼントなど、他愛もない会話をしながら教室に入る。
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