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今日、りんねは休みだった。
「りんりんが休みなんて珍しいじゃん」
「そ、そうだね」
唐突にぼくらのクラスに来たるみさんは、りんねの席に座って退屈そうにしている。
りんね抜きで話すのは初めてで、少し怯えている。相手に伝わってしまわないようにしないと・・・。
りゅうへいは一応この場にいるものの目を開けたまま眠っている状態で、とてもこの状況の救済者にはなりそうにない。というか元々無口だからだめだった。
「そういえば、ゆうたくん昨日誕生日だったんだよね?」
「う、うん・・・」
「ちょうど帰りりんりんに会ってさー。楽しそうにしてた」
なるほど、りんね情報か。まぁそこくらいしかぼくのことが漏れる場所はないのだけれど。
「んー」と言いながらるみさんはスカートのポケットを探っていた。次にブラウスの上に羽織ったパーカーのポケット、最後に胸ポケット。
一通りごそごそと探って「ちょい待ち」と教室を出て行った。いったい何事だろう・・・珍しく真面目な顔をしていたように思える。こんなこと言ったら失礼だろうか。
しばらくして戻って来たるみさんは息を切らしていた。
少しの間にいったい何が・・・。まるでぼくがりんねに走らされているときのよう。
「はい!」
ぼくの前に出した手のひらには、可愛いパッケージの飴が2つ置かれていた。
「遅れたけど、プレゼント!急ぎだからこんなものしかなかったんだけど・・・」
るみさんはテへ、と笑いながら申し訳なさそうに首筋をかいた。
おずおずと手を出すと勢いよく手のひらに置かれた。落とさないように握りしめて「ありがとう」と言うとるみさんは満面の笑みを浮かべた。
「・・・るみさんは優しいね」
知り合って間もない友人の友人の誕生日に、わざわざ走ってまでプレゼントを探してくれる。見た目は派手で明るくて、りんねに似ているからぼくの苦手なタイプではあるけれど、実際とても優しくて、たまにりんねの魔の手からぼくを救ってくれる。
友達の友達でも、るみさんに出会ってよかったと、ぼくは本当にそう感じている。
「なにこの子・・・ほんと可愛い」
「え・・・何!?」
るみさんの目の色が少し変わって、飛び掛かられそうになったところを、ギリギリりゅうへいを盾にして回避。さすがにそのままりゅうへいを襲うことはしなかった。
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