転機

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安が強い。 高い所へ行ってから周囲を確認した方が確実だろう。 少し試してみる。 川へ手をいれてみるが触覚はあっても温度は感じない、それに防水機能もあるみたいだ。 もしかしたら泳げるだろうか? 水を弄びながら考える。 この身体はおかしい。 まだ腕だけなら許容範囲かもしれないが 女性よりも細い脚は問題なく人の様に歩けるし、腰や首の動きも不自由なく動く。 それも人の手も入ってない山道を軽々と歩けるなどオーバーテクノロジーなのは間違いない。 いったい世はどうなってしまったのか 宇宙戦争でも起きたのか? ナチスが墓から蘇ったのか? などと夢想していると唐突に日が陰った 雲ではない、 背後に何かが、獣がいる だが、それもまた違う、 獣ではない 振り返った私の眼前には獣を、 熊を模した機械の化け物が唸りを上げていた。 眼前の物は熊ではない何かだ。 その姿に生物的な要素などなく、 身体を覆う鈍い銀色の装甲と黄色に光る目は兵器を思わせた。 現代では目にかかれないファンタジー兵器に目を奪われてしまった後に 自身が非常な危機に陥っている事に気がついた。 背後は川、右手は崖、左手は急勾配の山肌、前方数歩で届く距離に明らかな敵性存在。 退がれないし勝てないし逃げられない。 熊への対処と同じように後ろへ下がるべきなのか… そうだ、それしかない。 私は光る目を見ながらゆっくりと退がる。 ゆっくり…ゆっくり… 冷汗が流れた気がした 機械熊もまた距離をゆっくりと詰めてきている。 私は足を川に掬われないように足を擦るように動く早くとも静かに慎重に。 目的は何なのか対話は可能なのか操縦者はいるのか… 川の流れる音がやけに煩く感じる。 一歩、一歩と後ろへ… 緊張で十数秒が数十分にも感じる… ようやく川の半ばに差し掛かる頃で、 もしかしたら無事に済むかもしれないなどと思った時、 機械熊の目が文字通り変わる。 黄色から赤へ 機械熊から聞きなれない異様な低いエンジン音が大きくなり排気孔から白い煙が噴き出した。 逃げなければ!逃げなければならない! 反転して走り出す 一歩目の左脚を踏み出して二歩目を上げたところで攻撃をもらった、 硬質な何かが切断される音ともに身体が凄まじい力で吹き飛ばされ川底に叩きつけられた。
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