第21話 ヘリにて

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「こらこら、引っ掻いてはダメですよ広太様」 無反応だった広太様が呻きながら突然頭を掻こうとした。しかもかなりの力で。「ふむ」と俺は一瞬手を止めた。精神錯乱系の薬にしちゃ反応が妙だな? 「一体何を盛ったんでしょうねあの上司は」 「よそ見してんじゃねぇぞ!!コルァ!!!!」 ははっと笑いながら俺はバックステップを踏んだ。間合いを取り左足に力を込める。一度引いたかと思った俺が突っ込んでくる勢いで駆けだしたものだから残っていた黒服連中はたじろいだ。 そのままの勢いで黒服に飛び蹴りをくらわす。 「國枝キーーーーック!!………なんつって」 蹴りと同時に両腕ラリアットも繰り出し追手の三人も撃破した。これで六人目。念のためにスタンガンで止めも刺しておく。こういう時ばかりは広太様の意識がこちらに向いていないことに安堵した、さすがにお子様は見ちゃいけないのです。そぉれバリバリバリ~~!!! 「………ふぅ、それにしても」 どうしたものかと俺は悩んだ。 俺達は一階を目指した。隆一郎様と落ち合う為に。だが予想はしていたがそんなに簡単にいく筈もなく………いや、予想以上の歓待を俺は受けていた。 非常階段にエレベーター。………俺が厳重朗をまいて逃げた時から連絡が回っていたのだろう。気づいた時にはすでに完全包囲されていた。そしてこの黒服達の武闘派たるや旦那様の本気度が伺える。 広太様と結婚するんだい!という気概、敵ながらアッパレ。俺も見習いたいものである。まぁ、オレの愛はビックバン並みだからすでに旦那様より勝っているのだけれどね、ふふ。 ………さて、下に逃げれないのなら上に逃げれば良いじゃない。暴れる広太様を引きずって俺は高らかに笑う。 ここは屋上、逃げ場などどこにもなかった。
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