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戦い
スニーカーを爪先に引っ掛けるようにして、僕は走りだした。前の彼女の家に向けて、全力で走る。
「宙!」
瓦礫が片付けられて空き地となったそこには、縛られた彼女と男が立っていた。
「来たか、藤木 颯。さあ、悔しいか?」
「あぁ、『お前なんか』に彼女を取られて悔しいよ」
「何が言いたい」
「所詮、非・リア充の僻みだろ?彼女のこと好きだったのに、彼女は僕のことが好きだった。
捕らえるなら僕だけにしろ、彼女は関係ないだろ。彼女の身にもなってみろよ。好きな人を殺したやつを好きになれるか?」
「いや、こいつも関係ある。好きになんてなってもらおうと思ってない。俺に服従させる。ただそれだけだ」
「なら、戦うしかないな」
僕は奴と向き合う。奴は銃を手に持っていた。
「文明の利器に素手が勝てると?それとも、殺されたいのか?」
「そんなわけないだろ」
僕は合気道を小さい頃から習っていた。銃さえなければ、取っかかってきた奴を締め上げて終わりだ。だが、こちらからかかっていったとしても撃たれて終わる。
僕は両手を広げた。
「やれるもんならやってみろ」
奴は僕に銃口を向ける。彼女が高い声を出した。口も塞がれていて言葉は発せないが、呻き声をあげることは出来る。
「大丈夫」
奴は腕に自身がなかったらしい。銃を持ったまま歩み寄って、至近距離で僕を仕留めようとした。
それが奴の敗因だった。
僕は奴の腕を捻った。奴は簡単に銃を落とした。僕はその銃が誤作動しないように蹴り飛ばす。奴が銃を追いかける動きを利用して身体ごと締め上げた。
「やれるもんなら、な」
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