調理室にて

7/8
前へ
/8ページ
次へ
そんなことを思いつつ、皿のチョコレートを指先で、出来るだけ綺麗に拭いとってから伊藤くんを睨むと、彼はにこにこしながらこちらを見ていた。 うー・・・・・・私だけこんなに追い詰められるなんて、ずるくない? こうなったら、こっちからもなにか ―――――― 面白がるような様子になんだかカチンときて、チョコレートを伊藤くんの口元に塗りつけてから、そこに自分のくちびるを押しつけた。 「!!!」 後ずさりしつつ窓際から離れると、彼はまだ驚いている様子で身動きひとつしない。 そこから目を離さずに、くちびるに移ったチョコレートをペロリと舐める。 「・・・・・まだ甘過ぎる感じしない?」 「あ、あぁ・・・・・」 「ビターチョコ、全部いれちゃおっと」 伊藤くんがぼんやりしている間に、彼に背を向けて作業台に戻り、残っていたビターチョコレートをボウルに入れて仕上げに取りかかった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加