カエルの子はカエルにしかなれない

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ネオンサインに囲まれた歓楽街で、僕は生まれた。 母は、水商売をしていて、父は知らない。 もちろん、暮らしは裕福じゃなくて母だって自分の生活のために働いている。僕のこと は正直二の次だった。 男を連れ込むことだって一度や二度じゃない。彼氏ができては別れての繰り返し。 食事は基本母が置いていく五百円で、僕はどうにかやりくりしていた。 ふと思ったことがある。どうやって僕は育つことができたのか。あの母がよく幼い僕を 育児放棄しなかったものだと。それは謎のままで。でもまあ、謎のままでいい気がした。 気が向いた時にたまに作ってくれる料理というかなんというか、それはあんまりおいし くなかったけど、たまらなく嬉しかった。 小学校ではいろんな下敷きをみんなで自慢するのが流行っていて、僕は決してそういう グループには属していなかったのだけれど、近くでそういうことをされていると、人並み に欲しかった。だから給食費の分を差し引いて、少しずつ、少しずつお金を貯めた。給食 費が月に五千円くらいだから、結構時間がかかってしまったけど頑張ってやっとお金が貯まった。けれど、実際買いに行ってみると何がいいってよくわからずに困ってしまった。赤くて透明な物、緑色で透明なものはなんかいやだった。いやでもネオンサインを思い出すから嫌だった。結局絵柄を見て人気のキャラクターのものを買った。 次の日意気揚々と学校に持っていくと、そのキャラクターの描いてあるノートを持って いる人がバカにされていた。下敷きは鞄の中からでてくることはなかった。
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