0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
中学に入ると僕は募金活動を始めた。
「恵まれない子どもたちに手を差し伸べてはいただけませんか」
募金箱を持って、地元の大きな駅に行き、活動をする。時間は部活終わり。
もちろん、集めたお金を人のために役立てる気なんてさらさらなくて、部活動に入り、
お金が必要になったので始めたことだ。
恵まれない子ども。すなわち僕。決して間違ってはいないはずだ。
人間は冷たいのは知っていたつもりだった。
稼ぎは数百円ぐらい。一食分稼げればいい方。でも、ないよりまし。正直給食に大分助
けられている。とはいえ、その給食費は母が置いていくお金を貯めたものだからまあなん
ともいえない。
毎日の募金活動で思うのは、絶対に母のようにはならないこと。まあ、性別が違うから
なんともいえないが、こう感覚的に。人間的に。
合宿が近づいてくるといつもより長めに募金活動に励んだ。どうせ母は夜はいない。警
察官に見つからないかどうかだけが心配だった。
合宿参加費の支払期限が翌日に迫ってもお金は貯まっていなかった。
合宿にはいきたかった。部活にはきちんと参加したかった。学校ではきちんとしていた
かった。あんな母親だからこんな子供なんて思われたくなかった。
どうしようか悩んでいるときに声をかけられた。
「いくら必要なの?」
優しい声だった。
俯いていた顔をばっとあげた。僕は頭の中で計算して、金額を伝えた。
「そう、じゃあいこうか」
その人は僕についてくるよう促した。
僕は気づくと、ネオン街の外れにいた。
枕元にはお金が置いてあった。
結局、カエルの子はカエルにしかなれないのかと。
僕は、泣きじゃくった
最初のコメントを投稿しよう!