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「チョコは媚薬とか言うじゃん」
「私のせい?!」
いや、そうじゃない。
もし、チョコレートのせいだとしても、俺は。
「まぁ、そんな"なにか"が無くたって俺は・・・・・・」
山下さんに触れたいんだ。
手を伸ばして、少し高い位置にある山下さんの頬をそっと撫でる。
彼女はピクリとはしたものの、避けることなく、俺の手にそっと自分の手を重ねた。
「皓貴ー!そろそろ集合だぞーっ」
サッカー部の友人の声で、お互いの手が離れる。
「あー・・・くそっ。後で迎えに来るから!チョコは・・・」
「食べないなら、みんなに・・・」
「だめ!」
そう叫びながら、集合場所へと走り出す。
あのチョコレート。
すでに甘さ控えめに調整されていたけれど、ココアパウダーがかかると苦味の強い物になるだろう。
うん、まさしく俺好みだな。
あれ・・・?
もしかして、あのチョコ、俺のために?
だとしたら・・・・・・、彼女の名前を呼ぶ日も近いかもしれない。
山下さんの温もりが残る手を、グッと握りしめた―――――――――
end
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