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今日はバレンタインデー
今年はチョコレートケーキかー
甘すぎるのはニガテなんだよなぁ・・・・
調理室へ近づくと、いつもより薄暗くはあったが、室内の明かりはついていて、中を覗くと女子生徒が一人、中央の調理台のそばで、こちらに背を向けて立っていた。
クラスメイトで調理部部長の山下 碧珠だ。
「山下さん」
いつも通りに窓を開けて声をかけるまでは、彼女が作ったチョコレートケーキは自分が食べるものだと思い込んでいた。
それが、いつものやりとりだったから。
けれど、それは、俺の勝手な思い上がりだった。
ケーキはすでに、誰かの手にあるという。
「・・・っ?!・・・・・・あげたって・・・・・・・・・」
一体、誰に。
そう続けようとした言葉を飲み込んだ。
そこまで踏み込んで聞く勇気がない。
二年生になり、同じクラスになってから、以前とは比べほどにならない位距離が縮まったと思う。
けれど、彼女に好きな人がいるとか微塵も感じることがなかった。
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