たった10分くらいの出来事

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今日はバレンタインデー 今年はチョコレートケーキかー 甘すぎるのはニガテなんだよなぁ・・・・ 調理室へ近づくと、いつもより薄暗くはあったが、室内の明かりはついていて、中を覗くと女子生徒が一人、中央の調理台のそばで、こちらに背を向けて立っていた。 クラスメイトで調理部部長の山下 碧珠(あすみ)だ。 「山下さん」 いつも通りに窓を開けて声をかけるまでは、彼女が作ったチョコレートケーキは自分が食べるものだと思い込んでいた。 それが、いつものやりとりだったから。 けれど、それは、俺の勝手な思い上がりだった。 ケーキはすでに、誰かの手にあるという。 「・・・っ?!・・・・・・あげたって・・・・・・・・・」 一体、誰に。 そう続けようとした言葉を飲み込んだ。 そこまで踏み込んで聞く勇気がない。 二年生になり、同じクラスになってから、以前とは比べほどにならない位距離が縮まったと思う。 けれど、彼女に好きな人がいるとか微塵も感じることがなかった。
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