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だとしたら、ここで何してるんだ?
「あー・・・・それで、何してるんだよ。他の部員いないじゃん」
背を向け続けていた山下さんは、溶かしたチョコレートの味見をしていると言いながら、指を咥えつつ振り返った。
うっ・・・不意打ちだろ・・・
時折見せる、こんな仕草を見てかわいいと思ってしまう。
誰にでもそう感じるわけではない。
普段、落ち着いた雰囲気の彼女がするから、効果がある。少なくとも俺には。
味見させてとねだると、ケーキの余りで作ったという即席のチョコレート菓子を持ってきてくれた。
まだ温かいチョコレートがかけられたそれを見て、ちょっとした悪戯心が芽生える。
ケーキを貰えなかった悔しさと、遅れをとった自分の不甲斐なさが入り交じった、八つ当たりみたいなものだ。
「食べさせて?だって、俺の手汚れてるじゃん」
ほんとはさっき、洗ってきたので汚れてはいない。
「じゃ、じゃあ、フォークを・・・・」
「いいから食べさせて」
きっぱり断られるかと思ったが、食べさせてくれた。
一緒に指まで味わわせてもらっちゃったけど。
「生クリーム、甘めなんだね」
「いまっ、指っっ!指舐めたでしょっ!」
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