たった10分くらいの出来事

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だとしたら、ここで何してるんだ? 「あー・・・・それで、何してるんだよ。他の部員いないじゃん」 背を向け続けていた山下さんは、溶かしたチョコレートの味見をしていると言いながら、指を咥えつつ振り返った。 うっ・・・不意打ちだろ・・・ 時折見せる、こんな仕草を見てかわいいと思ってしまう。 誰にでもそう感じるわけではない。 普段、落ち着いた雰囲気の彼女がするから、効果がある。少なくとも俺には。 味見させてとねだると、ケーキの余りで作ったという即席のチョコレート菓子を持ってきてくれた。 まだ温かいチョコレートがかけられたそれを見て、ちょっとした悪戯心が芽生える。 ケーキを貰えなかった悔しさと、遅れをとった自分の不甲斐なさが入り交じった、八つ当たりみたいなものだ。 「食べさせて?だって、俺の手汚れてるじゃん」 ほんとはさっき、洗ってきたので汚れてはいない。 「じゃ、じゃあ、フォークを・・・・」 「いいから食べさせて」 きっぱり断られるかと思ったが、食べさせてくれた。 一緒に指まで味わわせてもらっちゃったけど。 「生クリーム、甘めなんだね」 「いまっ、指っっ!指舐めたでしょっ!」
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