たった10分くらいの出来事

7/10
前へ
/10ページ
次へ
「どうすんの?それ」 「しばらく冷やしてから、ココアパウダーをまぶして完成よ」 山下さんは冷蔵庫へと移動して、容器を中へ入れた。 俺はその間にボウルに散らばっているチョコレートをヘラで必死に集めて人差し指で掬いとり、それを見つめた。 うーん・・・ 戻ってきた山下さんは、後片付けを始める。 「山下さん」 「なに?それも片付けるんだから、早くしてね」 彼女は返事をするが、こちらを見ない。 やっぱりさっきの事、意識しているのかもしれない。 「山下さん」 もう一度声をかけたが、それでもこちらを見ようとしない。 「・・・・なに?」 少し、勇気を出してみる。 「・・・・碧珠(あすみ)」 「えっ?」 驚いた山下さんは、ようやくこちらを向いた。 何かを言いかけて開かれたその口に、俺はチョコレートが付いた指を差し込む。 「んっっ!!」 突然のことに、山下さんは目を見開く。 思わずやってしまった。 自分の行動に驚きつつも、そのまま、彼女の口の中の至る所にチョコレートを塗りつける。 「おいしい?」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加