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私の妹は主の親友だった。
妹は、長い髪が一際目を惹く美しい娘だった。
妹がまだ幼い頃から、私は貧しい家のため出稼ぎをするべく隣町に住んでおり、殆ど家に帰ることができない生活だった。
大切な家族を養うために、私は必死に働いていた。
妹の親友である主に会ったのは一度きり。
主は妹に歳の離れた兄がいるということなど覚えてはいないだろう。
ある時、その髪の魅力を見初められ、子供に恵まれない貴族の夫婦が妹を娘に欲しいと言ってきた。
私たち家族は、大切な妹がこの屋敷に迎えられると聞いて少し躊躇ったが、妹の幸せを願い心から喜び、送り出そうと決めた。
しかし、妹が屋敷に迎えられると知った主は
なぜ自分ではないのかと嫉妬に燃えた。
主は妹の美しい髪を妬み、
ある時その髪を梳かすと言って切ってしまった。
妹は女性の魅力の象徴を失くし、屋敷へ迎えられる話も泡と消えてしまった。
代わりに、主が屋敷へ迎えられることとなり、妹は親友の狂行と裏切りに心を痛めてしまったのだ。
そして、久しぶりに家に帰った私が目にしたのは、自ら命を絶った妹の亡骸と泣き崩れる両親の姿だった。
それから私は妹の復讐を誓った。
貴族の令嬢となった主に近づくには、屋敷の使用人になるのが一番だと思った。
だから私は、この煮えたぎる熱い思いを隠して、屋敷に迎えられた主を追いかけるように執事となった。
しかし私は男であり執事の身。
主の体には触れることさえできない。
チャンスは一度きり。
失敗は許されない。
私は執事として彼女の成長を見守りながら、好機を伺っていた。
周囲にこの気持ちを悟られないように細心の注意を払って。
主が私に心を許したとき
主が妹にしたのと同じ方法で
復讐するために
*****
主は一瞬の出来事に言葉を失っている。
そしてゆっくりと振り返り、私の目を見つめる。
私はその視線に、氷のような冷ややかな微笑みを返す。
「これはあなたの償いなのですよ。」
全てを悟った彼女は、唇を薄く開く。
「…そうね。」
短くなった髪から雫が堕ちた。
主....
ずっと、ずっと昔から
その髪を梳ける日を
待ち侘びておりました。
ーその髪を梳きたい ENDー
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