7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
執事の朝は早い。
屋敷の誰より早く起床し、まだ暗い窓の外を見やる。
この一晩で、かなりの雪が積もったようだ。
後程、玄関の雪を片付けなければならない。
シャツのボタンは一番上まできっちり留めて、黒い制服に袖を通す。
蝋燭の灯りを頼りに、自室を後にする。
まだお休みになられている主を起こしてしまわぬよう、照明は点けない。
こうして静かに1日が始まる。
主の起床までに部屋を暖めねばならない。
一晩で冷え切った暖炉に火を灯す。
薪が燃えるパチパチという音が、まだ誰もいない広い部屋に響く。
主の履物を暖炉のすぐ傍に置く。
後程お部屋にお迎えに上がる頃には温かくなっているだろう。
朝食で使用する食器を磨き、テーブルにはシルクのクロスを掛ける。
椅子の並びを整え、季節の花のアレンジメントを飾る。
それにしても今日は冷え込む。
指先が悴み、吐く息は白い。
ナイフとフォークは暖めておこう。
最初のコメントを投稿しよう!