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「君のお母さんが?」
「オレの母ちゃん、役場で働いてるんだ。祭りの役員でもあるんだゼ。物知りなんだ」
だから母ちゃんに聞きに行こう、と少年が四十に近い見知らぬ男へ提案する。なるほど確かにそうさせてもらえば、確実な情報を得られる可能性も高い。
しかしそれでは君や君のお母さんに迷惑をかけないかと言えば、大丈夫だと言い切られてしまった。
本来ならば、そこで遠慮するのが大人としてあるべき姿なのだろう。だがそれ以上に私は、今し方出逢ったばかりのこの少年に、不思議なよすがを感じたのだ。
元来模範的な大人になろうとして挫折した人間だ。今更こんな破格が何だと言うのか……そういうわけで、私は少年の無邪気な好意に甘えることにした。
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