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まさか相談していたなんて、恥ずかしくて頬が熱くなった。
「信じられねぇ! 言っておくけど無理やりだからな」
「そうなんだ。すごく落ち込んでいたみたいだけど、無理やりキスしたんじゃ、聖人が悪い」
俺は葉月の味方だよと頭を撫でられて、その手を振り払おうとしたけれどやめた。慰めるように優しく撫でてくれたからだ。
「御坂、ありがとう」
「うんん。ねぇ、お弁当、食べないの?」
今日は母親のリクエストで炊き込みご飯にしたのだが、それを少し食べただけで箸が止まっていた。
「あぁ。おかず、食うか」
「ありがとう。ごはんも食べて良い?」
「食べかけだぞ。それでも良いなら」
葉月の残りだから大丈夫と笑い、お弁当の中身を全て平らた。
「御馳走様」
と手を合わせて弁当のふたを閉じた。
「また食べたいな」
「学校に来れる時、連絡をくれれば作ってやるよ」
御坂は透のように、つい甘やかしたくなるタイプだな。
「本当?」
と小首を傾げる姿は、女子が見たら可愛いとキャーキャー言いそうだ。
「あぁ。その時は尾沢も誘え」
「うん」
その嬉しそうな表情に、こっちまで和みそうになった所に、
「俺は、駄目かな」
と、目の前に神野の姿がある。必死になって俺を探していたのだろうか、息を切らしていた。
「探したよ、葉月」
俺へ触れようと手を伸ばが、それを避けて御坂の方へと顔を向ける。
「……御坂、弁当箱」
「あ、うん」
空の弁当を受け取るとそれを包んで、教室の方へと歩き出した。
「葉月」
引きとめようと声を掛けてくるが、俺は振り返らずに、
「飯、少ししか食ってねぇンだよ」
とだけ言う。
「あ、売店……」
まさかそんな所に行くわけがない。俺が行ったらちょっとした騒ぎになる。
俺は大袈裟にため息をつき、
「御坂、俺とコイツ、早退すっからさ、上手く先生に誤魔化しといて」
「あ、うん。そういう事なら任せておいて」
頑張ってねと、その言葉は俺だけではなく神野に対しても言っているのだろう。手を振りながら送り出してくれた。
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